米企業に出された「反DEI」提案、株主総会での否決相次ぐ

記事のポイント


  1. 反DEIが強まる米国企業では2025年の総会シーズンで反DEIの株主提案が増えた
  2. 株主総会での決議結果を見ると、圧倒的多数で反DEIの提案は否決されている
  3. コストコ、アップル、ディズニーなど、株主総会での「反DEI」の動きをまとめた

トランプ政権下で強まる「反DEI」の動きは企業の人材施策にも影響を及ぼしている。2025年の米国企業の株主総会シーズンでは、2024年より多くの「反DEI」の株主提案が出された。しかし、多くの企業の株主は、「反DEI」提案を圧倒的多数で否決している。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

米国企業の株主総会では、
「反DEI」の株主提案は圧倒的多数で否決されている

■25年米国では「反DEI」株主提案が増えた

ESGに対する反ESGの動きと同様に、米国ではDEI(多様性、公平性、包摂性)に対しても、バイデン前政権時代から、揺り戻しの動きが出てきていた。

保守派のインフルエンサーとして有名なロビー・スターバック氏は、2024年頃からさまざまな企業に対する反DEIキャンペーンを先導し、「ウォルマート、トヨタ、ターゲットなど15社以上のDEI施策を後退させた」(スターバック氏)と主張する。なお、これら企業は必ずしも、スターバック氏の主張には同意していない。

しかしトランプ政権が発足すると、2025年1月21日に「違法な差別の廃止と能力に基づく機会の回復に関する大統領令」を発令し、「民間部門におけるDEIによる違法な差別と優遇措置の廃止促進」の項目を含めるなど、企業に対する反DEIへの圧力が高まった。

2025年の米国企業の株主総会シーズンを見ても、株主提案の内容のバランスは大きく変化した。

米民間調査機関コンファレンス・ボードによると、2025年4月時点で米国企業に提出された反DEIの株主提案は、13件に増え、2025年のDEI関連の株主提案の4割を占めた。逆に、DEIを推進するよう求める株主提案は前年から減っている。

■米国での「反DEI」株主提案の共通点とは

フォードやハーレー・ダビッドソンなど、一部の米国企業がDEIの旗を降ろす中で提出された「反DEI」の株主提案には、いくつかの共通点がある。

1つは、株主提案を提出した団体だ。全国公共政策研究センター(NCPPR)、ナショナル・リーガル・アンド・ポリシー・センター(NLPC)、ネイサン・カミングス財団など、いずれも保守派の団体が株主提案を提出している。

彼らは、「DEIは企業にリスクをもたらす。よってそれは株主にとってのリスクだ」と主張する。2023年に米最高裁が「アファーマティブ・アクションは違憲」とした判決を論拠に、「DEI施策を維持すれば訴訟リスクにさらされかねない」と問題視する。

2つ目の共通点は、反DEIの株主提案を受けたどの企業も、提案に「反対」する立場を明示したことだ。企業が公開するプロキシーステートメント(委任状説明書:株主総会での投票を求める際に、企業側が株主に送付する説明書類)には、株主提案に反対する明確な理由が記載されている。

そして第3の共通点は、これら反DEIの株主提案が、株主総会において、ほとんど賛成票を得ることなく、圧倒的多数の株主によって否決されたことだ。

(この続きは)
■規制に対応してDEIを再定義する
■株主提案によって企業のDEI姿勢が明らかに
■2025年「反DEI」株主決議の9つの事例

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北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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キーワード: #ジェンダー/DE&I

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