記事のポイント
- 農林水産省はこのほど「令和6年度 水産白書」を公表した
- 海水温の上昇などで、サンマやスルメイカ、サケなどの不漁が長期化している
- その結果、2023年の漁獲量は前年比2%減の383万トンとなった
農林水産省はこのほど「令和6年度 水産白書」を公表し、海洋環境の変化による漁業への影響などを報告した。海水温の上昇などで、サンマやスルメイカ、サケなどの不漁が長期化している。その結果、2023年の漁獲量は前年比2%減の383万トンとなった。(オルタナ輪番編集長=吉田広子)
水産白書では、気候変動に伴う海洋環境の長期的な変化について分析している。日本の近海では、過去約100年間で年平均の海面水温が+1.33度上昇している。これは、世界全体の平均(+0.62度)や北太平洋(+0.65度)の2倍を超えるペースでの上昇だ。
2010年ころからは、海洋熱波の発生が顕著になり、海の異常高温が水産資源や生態系に深刻な影響を与え始めた。
海水温の上昇や海流の変化は、魚介類の分布や資源量の変動を引き起こす。特に、サンマ、スルメイカ、サケといった日本の主要魚種の漁獲量が近年大きく減少している。藻場の衰退をもたらすアイゴやガンガゼの分布も拡大した。
こうした不漁が続いた結果、2023年の漁獲量は前年比2%減の383万トンとなった。
一方、魚価は高騰し、2023年の水産物の生産額は約1兆6853億円と過去最高を記録した。しかし、漁業就業者数は一貫して減少しており、2023年時点で12万1389人、新規就業者は1733人にとどまる。高齢化や後継者不足といった課題は依然として深刻だ。
今回の白書では、各地の先進的な適応事例や施策も紹介している。さらに、IUU漁業(違法・無報告・無規制漁業)に対する取り組みとして、国際的な協調対応や国内法整備の強化など、持続可能な水産業実現に向けた政策方針も示した。