クロマグロの漁獲枠は拡大したが、国内管理体制は課題山積み

記事のポイント


  1. 乱獲で絶滅の恐れが懸念された太平洋クロマグロの資源量が近年増加傾向にある
  2. 漁獲枠の削減など国際合意に基づく資源管理が功を奏した
  3. 今年漁獲枠は拡大したが、国内管理体制の強化などクロマグロ漁の課題は残る

一時は乱獲によって絶滅の恐れがあるとされるまでに減った太平洋クロマグロの資源量が近年、増加傾向にある。

太平洋クロマグロの国際的な資源管理を話し合う中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)とその北小委員会、全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)の合同作業部会は2024年7月、釧路市での会合で30キロ未満の小型魚の漁獲枠を10%、30キロを超える大型魚の漁獲枠を15%増やすことで合意した。

太平洋クロマグロの資源量は近年増加傾向にある

■厳しい資源管理で資源量が増加に転じる

太平洋クロマグロの乱獲が問題になったのは2010年代だ。

産卵能力のある親魚の資源量が、漁業が本格化する前に比べてわずか4%にまで減少していることが専門委員会によって指摘され、2015年のWCPFC会合で大幅な漁獲枠削減が決まった。

その後、遅くとも2034年までに初期資源量を4%から20%にまで回復させるという目標も採択された。

いずれの合意にも大漁業国である日本政府は反対したのだが、会合で各国から厳しい批判を受けるなどした結果、合意を受け入れた。

それから10年足らずで、太平洋クロマグロの資源量は増加傾向に転じ、「現在の段階で既に初期資源の20%目標は達成された」との専門機関の評価も提出された。

■日本が提案した大幅な漁獲枠の拡大は受け入れられず
■クロマグロの経験を他の漁業資源に生かせ
■日本のクロマグロ漁が抱える課題は山積み

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ida_tetsuji

井田 徹治(共同通信社編集委員兼論説委員/オルタナ論説委員)

記者(共同通信社)。1959年、東京生まれ。東京 大学文学部卒。現在、共同通信社編集委員兼論説委員。環境と開発、エネルギーな どの問題を長く取材。著書に『ウナギ 地球 環境を語る魚』(岩波新書)など。2020年8月からオルタナ論説委員。

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キーワード: #漁業

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