英国最大の自然保護団体である英国王立鳥類保護協会(RSPB)と、日本の環境NGO6団体がこのほど、大阪湾の自然再生を提案する共同書簡を大阪府知事・大阪市長宛に送付した。書簡では、万博の会場となった夢洲の生物多様性が失われている現状を訴えている。大阪湾を「ネイチャー・ポジティブ(自然再興)」の国際的なモデル地域とすべきだと提言した。(オルタナ輪番編集長=吉田広子)

共同書簡を送付したRSPBは、会員数120万人を超えるヨーロッパ最大の自然保護団体だ。鳥類の保護を中心に、生態系全体の保全に取り組んでいる。
日本からは、公益財団法人日本野鳥の会、公益財団法人日本自然保護協会、世界自然保護基金(WWF)ジャパン、特定非営利活動法人バードリサーチ、公益社団法人大阪自然環境保全協会、日本野鳥の会大阪支部の6団体が共同で名を連ねた。
RSPBは過去15年間、絶滅危惧種・ヘラシギの絶滅回避を優先課題として掲げ、保護活動を展開してきた。ヘラシギは世界で800羽未満しか生息していない小型の水鳥だ。
大阪湾は、ヘラシギが繁殖地(ロシア北東部)と越冬地(東南アジア)を結ぶ「東アジア・オーストラリア・フライウェイ」上に位置し、中継地として重要な地域だ。なかでも夢洲は、かつて日本で五本の指に入る重要な観測地だったが、大阪・関西万博の開発で沿岸湿地の大部分が失われ、以降、ヘラシギの記録は確認されていないという。
ヘラシギは、同ルートを利用する数百万羽におよぶ水鳥を象徴する「フラッグシップ種」*され、その保全は多くの渡り鳥の生存にも影響する。しかし、沿岸湿地の消失がこうした渡り鳥の生息環境を脅かしており、湿地の保全・再生は喫緊の課題とされている。
共同書簡では、万博のテーマである「SDGs達成への貢献」を体現する取り組みとして、「夢洲の水辺を水鳥のために保全・管理すること」「大阪湾内の沿岸湿地を保護・再生し、新たに創出すること」「これらの取り組みを2025年大阪・関西万博の期間中に公式に公表すること」――を求めた。