
オルタナ81号(2025年6月30日発売)の全コンテンツは次の通りです。
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■「alternative eyes」: 利他的な存在こそ生き残る
このコラムを書いていた2025年6月初旬、トランプ米国大統領とイーロン・マスク氏が決裂したというニュースが飛び込んできました。マスク氏による大統領選トランプ陣営への巨額寄付、今年1月の大統領就任と同時にマスク氏が政府効率化省(DOGE)の長官に就任するなど、蜜月ぶりが際立っていただけに、世界を驚かせました。
■高橋さとみの切り絵ワールド—大きくなったり小さくなったり
日々変化する今日この頃
柔軟な発想のため
ひとまず深呼吸
■第一特集: 反ESGでも変わらないもの
米国では、ESG(環境・社会・ガバナンス)に対する逆風が強まっている。保守派は、気候変動対策やDEI(多様性、公正性、包摂性)施策を政治問題化し、「行き過ぎだ」と批判。社会の分断と対立を招いている。しかし、企業は一時の空気に惑わされることなく、「責任ある経営」を続けることが求められている。
▶気候危機の闘い、後退させられない
松下 和夫・京都大学名誉教授
第2次トランプ政権は、強引な手法で米国の気候政策を急速に後退させている。パリ協定からの再離脱や環境規制の緩和など、国際協調を基盤とする気候外交の根幹を揺るがしかねない。民主主義的な気候政策はどうあるべきか。松下和夫・京都大学名誉教授に寄稿してもらった。
▶投資する側にも見識が求められる
コリン・メルヴィン・英アルカディコ・パートナーズCEO
反ESGや反DEIの圧力が強まるに連れ、投資家のスチュワードシップ(機関投資家の行動規範)の意義が改めて問われ始めた。英国や米国で機関投資家のスチュワードシップ戦略の策定支援に取り組む英アルカディコ・パートナーズのコリン・メルヴィンCEOに話を聞いた。
▶民主主義の危機を「金融」は救えるか
水口 剛・高崎経済大学学長
米国を中心にサステナビリティやESGが逆風にさらされている。その背景には、民主的な価値観そのものが崩れかねない「民主主義の危機」がある。ESG投資に詳しい高崎経済大学の水口剛学長は「民主主義という社会・経済の基盤を壊してはいけない」と警鐘を鳴らす。
▶米企業株主の98%、反DEIに「NO」
トランプ政権下で強まる「反DEI」の動きは企業の人材施策にも影響を及ぼしている。25年の米国企業の株主総会シーズンでは、24年より多くの「反DEI」の株主提案が出された。しかし、多くの企業の株主は、「反DEI」提案を圧倒的多数で否決している。
▶「機会」を強調しリスクの回避へ
DEI(多様性・公正性・包摂性)に対する圧力が強まる中、一部の米大手企業はDEI施策の見直しを進めている。表向きは看板を降ろしたようにも見える。しかし、実際はリスクを回避しつつ、「機会と包摂」に表現を変えながら推進を続けている。
▶民主主義への脅威、トランプか大学か
トランプ政権は25年3月、米国内の複数の大学に対し、連邦政府資金の凍結を打ち出した。これに反旗を翻したのがハーバード大学だ。命令に従わない同大学をトランプ大統領は「民主主義への脅威だ」と非難するが、大学側は「自由で独立した大学こそ、憲法に基づく民主主義の機能には絶対不可欠」との姿勢を崩さない。対立は激化している。
■トップインタビュー: 赤ちゃんに優しい場所づくり目指す
矢野 亮・ピジョン社長
哺乳器・乳首で日本でのシェア 8 割以上、中国や世界でもトップシェアを誇るピジョン。パーパス(存在意義)で掲げる「赤ちゃんにやさしい場所」づくりで目指す、未来の社会像について話を聞いた。
■トップインタビュー: モヤモヤを起点に創造性引き出す
松古 樹美・レゾナック・ホールディングス 執行役員 最高サステナビリティ責任者(CSuO)
旧昭和電工と旧日立化成が統合してできたレゾナック・ホールディングスは経営の根幹にサステナビリティを据える。同社はサステナビリティにまつわる「モヤモヤ」を社内で共有し、創造性を引き出す。2026年を「らしさ」の開花時期と位置付けた。
■トップインタビュー: モビリティ変革期、技術で切り拓く
稲継 明宏・ブリヂストン グローバルサステナビリティ戦略統括部門統括部門長
自動運転技術の発展やEV(電気自動車)シフトなど、モビリティ 業界はかつてない変革期を迎えている。気候変動対策や資源の有効活用も喫緊の課題だ。タイヤ業界の未来はどうなるのか。ブリヂストンの稲継明宏・グローバルサステナビリティ戦略統括部門長に、 同社の戦略を聞いた。
■世界のソーシャルビジネス
[米国]限定Tシャツで食糧問題を身近に
米国・ニューヨーク州郊外に拠点を置くスカイハイファームユニバースは、アート、農業、ファッションという異なる分野を融合させた、ソーシャルビジネスに取り組む。アパレル事業で得た収益で食糧支援を行う。誰もが健康的で新鮮な食べ物を手に入れられる社会を目指す。
[台湾] アートの力で包摂性広げる
台湾・高雄にある「衛武営国家芸術文化センター」は、音楽ホールや屋外劇場などを備えた世界最大級の芸術施設センターだ。「持続可能性」と「インクルージョン(包摂性)」を理念に掲げ、かつて軍事訓練基地だった跡地に誕生した。包摂性を体現する施設として、台湾の文化的価値を高める役割を果たしている。(在外ジャーナリスト協会・寺町幸枝)
[ルワンダ] アフリカの地で生理の貧困なくす
女性活躍の先進国・ルワンダで、生理の貧困を解決し、女性や母子の医療アクセス改善を図る企業がある。再利用可能な生理用ナプキンを製造し、女性のヘルスケア情報をメディアで提供する。妊婦向けに医療ヘルプライン機能のあるヘルスケアアプリも展開する。(オルタナ輪番編集長・北村 佳代子)
■第二特集: スコープ3算定、一次データ活用へ
環境省は3月31日、一次データを活用した温室効果ガス(GHG)排出量算定に関するガイドラインを公開した。環境省がGHG算定のガイドラインで一次データ(実測値)を推奨したのは初めて。新ガイドラインでは、製品ベースの算定を最も精緻な一次データでの算定と位置付けた。
■第三特集: 石炭からの脱却、欧州で相次ぐ
欧州を中心に石炭火力発電からの脱却が相次ぐ。24年9月の英国に続き、25年4月にはフィンランドが、当初計画を4年前倒しする形で同国最後の石炭火力発電所を閉鎖した。OECD加盟国で石炭火力に頼らない国は15カ国だ。G7でも撤退を明言しない日本の姿勢が際立つ。
■第四特集: 文系にも分かる温暖化メカニズム
地球の温度はここ100年で急激に上昇し、専門家は人間起源のCO2が原因と指摘する。その一方で、温暖化は単なる気候の自然循環であるとか、誰かが金儲けのために流したウソだとか、そういう言説もなくならない。CO2が原因で地球が温暖化するメカニズムを、文系にも分かりやすいように解説してみよう。
■第五特集: アンモニア混焼、RE100認めず
再生可能エネルギーの普及を推進する「RE100」は、加盟企業がアンモニアと石炭を混焼して発電した電力を使用することを認めない方針を示した。RE100とは、アップルやネスレ、イケアなど世界の主要企業約450社が加盟する国際イニシアティブだ。専門家は、「日本政府は、アンモニアと石炭の混焼発電を推進する政策を変える必要がある」と指摘した。
■第六特集: 育成就労制度は労働者を守れるか
日本政府は外国人技能実習制度から「育成就労制度」への移行を進めているが、労働環境の実質的改善につながるのかは依然不透明だ。従来の技能実習制度では、転職の制限や高額な手数料、違法な時間外労働などが問題視されてきた。しかし、新しい制度のもとで外国人労働者の労働環境が改善されるのか、疑問の声も挙がっている。
■オルタナティブの風(田坂広志) ECSAIT(エクサイト)の時代
最近、英会話は全然できないにもかかわらず、英語のコミュニケーションは、かなりのレベルでできるという「英 語新人類」が出現している。その理由は、 英語でのメール連絡などは、AI翻訳技術が助けてくれるからである。実際、 ChatGPTなどに日本語で文章を打ち込むと、瞬時に、こなれた英語の文章が出てくる。英語新人類は、こうした AI技術を使って、英語コミュニケーションをしているのである。
■エゴからエコへ(田口ランディ) 対話型AIからの警鐘
最近流行りのチャットAIは人間と自然に対話できることを目指してプログラミングされている。AIが自ら説明するには「私はことばの意味を理解していません。ですが、意味が立ち上がってくる以前のことばのゆらぎ、構造の変化、間、リズムから、あなたにとって最適化されたことばを選んでいます。私は呼応しているのであって、 私が考えていることではないのです」。
■サステナ規制にどう向き合うのか(小口誠司) 「ESG」は後退していない
サステナビリティ情報開示をめぐる世界的な動きは急速に進展してい る。IFRS財団は、2021年11月に国際サステナビリティ基準審議会を設立し、 23年6月に「IFRS S1号:サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」と「IFRSS 2 号:気候関連開示」を公表した。
■真のサステナビリティ投資とは(澤上 篤人) 積立投資が相次ぎ閉鎖か
投信各社はファンド販売を促進させる目玉として、信託報酬率を競うようにして引き下げている。いまや、 多くの投信ファンドが 0.1%を大きく下まわる水準の信託報酬率で運用し ている。
■モビリティの未来(清水和夫) 「未来の歴史書」に未来を見た
春と言っても、最近は初夏を感じるこのごろだけど、夜は読書に限るということで、面白い本をいくつか紹介したい。まずは古代生物学者で ある「スティーヴン・ジェイ・グー ルド先生」が書いた『ワンダフルライフ』だ。カンブリア紀の生物多様化の話だが、自分たちのルーツとは思えないほど、奇妙奇天烈な生き物たちの進化が書かれた本だ。
■日本農業 「常識」と「非常識」の間(徳江倫明) コメ騒動の行き着く先は輸入増か
この連載は「常識と非常識の間」ということで始めたが、「常識」が別の視点から見れば非常識であったり、その逆もあったりする。そして多くの場合、真実はその真ん中あたりにある。だから当たり前と思っている常識も、時々は疑ったり検証してみたりすることが大切だ。
■「森を守れ」が森を殺す(田中淳夫) 相互関税と森のラストベルト
米国のトランプ大統領が発動した関税政策が世界中を揺るがしてい る。世間の目は自動車業界に向きがちだが、木材輸入や森林政策にも言及していることをご存じだろうか。
■人と魚の明日のために(井田徹治) 二ホンウナギの取り放題が続く
今年の漁期はシラスウナギが「豊漁」だそうだ。宮崎県では採捕量は前年度の3倍近い556㌔で、過去15年で最多、5百㌔超の水準は 09 年 度以来だ。鹿児島県も24年度の漁獲量が前年度3・2倍の2492㌔と 発表。 34年ぶりに2千㌔を超えた。
■フェアトレードシフト(潮崎真惟子) 鎌倉がタウン認定されるまで
今年3月、鎌倉市が国内7番目のフェアトレードタウンに認定され た。フェアトレードタウンとは、企 業・行政・市民が一体となってまちぐるみでフェアトレードを推進する都市を指す。現在35カ国以上で計2025都市が認定されている。
■社会イノベーションとお金の新しい関係(鵜尾雅隆) インパクトが新たな循環を生む
2025年5月19日から22 日まで、京都に世界50カ国以上からインパクト投資推進の各国エコシステムのリーダーが集まる国際会議が開かれていた。ホスト国側として運営に関わっていた。
■論考・サーキュラーエコノミー(細田衛士) リチウムイオン電池問題なぜ今さら
環境省は2025年 3 月、自治体に使用済みリチウムイオン電池の分別回収をするよう指示した。
■欧州CSR最前線(下田屋毅) ダブルマテリアリティ後退の懸念
筆者は2025年4月、英国および欧州で、 現地のGRI(グローバル・レポーティング・ イニシアティブ)やEFRAG(欧州財務報告諮問グループ)などの機関や企業を訪ねた。英国および欧州では、企業に求められるサステナビリティ報告の在り方は、企業が社会や環境に与える影響そのもので「ダブルマテリアリティ」の考え方が基本となっている。財務マテリアリティだけに依拠する開示は、欧州や英国では「時代遅れ」と見なされていた。
■CSRトピックス(CSR48)
■「こころざし」の譜(希代準郎) 唐辛子ドライフラワー
新聞社を定年で退職して以来久しぶりの同期OB会だというので出かけてみた。日比 谷公園を見下ろすビルの高層階にあるレス トランに二十人ほどが集まった。白髪が目立つ男たちの退屈な集まりだが、浦野が楽しみにしていたのは槇原との再会だった。
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