記事のポイント
- サステナ商品の小売売上高の成長率は非サステナ商品よりも高い傾向に
- 英市場調査会社が米国や英国、日本など主要25カ国を対象に調べた
- 特に美容関連製品については、成分までこだわる消費者は増えている
英市場調査会社のユーロモニター(本社ロンドン)はこのほど、サステナビリティ商品の小売売上高の年平均成長率(CAGR)は、非サステナビリティ商品と比べて高い傾向にあると公表した。米国や英国、日本など主要25カ国を対象に調べた。特に美容関連製品については、成分や製品の作り方までこだわる消費者が増えていることが分かった。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)
ユーロモニターは主要25カ国を対象に、サステナ商品と非サステナ商品の小売売上高の年平均の成長率を調べた。調査の結果、サステナ商品の2024年の小売売上高は8604億米ドル(約125兆円)に達し、2020年から2024年で年平均成長率(CAGR)は7.9%を記録した。非サステナ商品のCAGRよりも、2ポイント高かった。
日本におけるサステナ商品の小売売上額は、2024年に120億米ドル(約1.7兆円)に達し、2020年から2024年でCAGRは3.7%を記録した。これは、非サステナ商品よりも、1.1ポイント高い成長率だった
調査対象国の25カ国は次の通り。米国、英国、日本、ドイツ、インド、中国、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、チリ、フランス、香港、インドネシア、イタリア、メキシコ、オランダ、ポーランド、サウジアラビア、シンガポール、南ア、韓国、スペイン、スウェーデン、UAE。
ユーロモニターは、動物福祉に配慮していたり、化学成分不使用のものなどをサステナ商品と定義した。リサイクル原料を使っていたり、フェアトレードなどの国際認証を取った製品も含めた。

■サステナ情報は製品の性能と組み合わせて訴求を
ユーロモニターの調査では、美容関連製品(ビューティー・パーソナルケア商品)の売上高が最も高く、1210億米ドル(約17兆円)を記録した。
「ナチュラル」「ヴィーガン」「クルエルティフリー(動物実験なし)」などの表示を付ける製品が増えており、その背景には製品の成分や作り方に関心を持つ消費者が増えてきたことがあるという。
一方、ユーロモニターによると、2023年ごろには、企業が消費者からの「グリーンウォッシュ」批判を恐れて、サステナビリティへの言及を控える傾向があったという。企業がサステナビリティの取り組みの主張を控える現象を「グリーンハッシング」と呼ぶ。
だが、同社の調査では2024年にはオンライン商品に占めるサステナ商品の割合が増えてきたして、「サステナビリティを訴求する傾向は回復してきた」と表現した。企業は「ナチュラル」や「環境に優しい」という表現を慎重に使いつつ、それらの主張の根拠を示して情報発信するようになってきたと分析した。
ユーロモニターのホルヘ・ズニガ・シニア・サステナビリティ・インサイト・コンサルタントは、「サステナビリティは、商品の価値を高めるだけでなく、新たな収益源を生み出す可能性がある。特に、味や品質、性能といった購買の決め手となる要素と組み合わせることで、その効果はさらに大きくなる。主張した内容の裏付けが求められる中で、どのようなメッセージを選ぶかが差別化のカギとなり、長期的な価値の創出につながる」と話した。
企業がサステナビリティを打ち出す際に気を付ける点として、ズニガ氏は3つのポイントを挙げた。一つ目は、ブランドのコミットメントや中核事業との整合性だ。業界や市場によって異なるが、ブランドや中核事業と整合性を持ってサステナビリティを訴求することが重要だとした。
二つ目は、実質的でインパクトのある改善点を強調することだ。業界や国ごとに重要課題は異なる。それらの課題に対応したメッセージを打ち出すことで、より影響力が高まる。最後にズニガ氏が指摘したのが、グリーンウォッシングへの対応だ。訴求した内容の根拠をしっかり持った上で、情報を発信することが重要だとした。