アシックス、サステナの経営統合を進化させる4つのカギ

オルタナは8月20日、サステナ経営塾21期第4回を開いた。第3講には、アシックスの吉川美奈子・エグゼクティブディレクターが登壇し、アシックスのサステナ経営戦略について講義した。講義レポートの全文は下記の通り。

■創業哲学「健全な身体に健全な精神があれかし」

本日は、アシックスのサステナビリティ経営がどのように進化したのか、その変遷についてお話しします。

アシックスの2024年度の売上高は約7000億円で、海外売上比率は85%に達するグローバル企業です。特に欧州の同業他社はサステナビリティへの意識が非常に高く、こうした市場環境が私たちの取り組みを加速させる一つの要因にもなりました。

アシックスのサステナビリティを語る上で、まずご理解いただきたいのが、その創業哲学です。社名の「ASICS」は、「健全な身体に健全な精神があれかし」というラテン語「Anima Sana In Corpore Sano(アニマ・サーナ・イン・コルポレ・サーノ)」の頭文字から取っています。

これは、戦後の荒廃した日本で、希望を失いかけていた子どもたちをスポーツの力で元気にしたい、という創業者である鬼塚喜八郎の強い思いから生まれた言葉です。まさに、事業を通じてより良い未来をつくるという、サステナビリティの考え方が創業の原点にあります。

サステナビリティの全体像としては、この理念を頂点に据え、その実現のために「PEOPLE(人と社会への貢献)」と「PLANET(環境への配慮)」という2つの柱を立てています。「PEOPLE」の側面ではサプライチェーンにおける人権尊重、「PLANET」の側面では気候変動への対応や循環型ものづくりを中核に据え、活動を推進しています。このシンプルなフレームワークは、社内での理解浸透にも大きく貢献しました。

ガバナンス面では、CEOを議長とするサステナビリティ委員会を設置し、人権課題についてはリスクマネジメント委員会傘下の人権委員会で議論するなど、経営の中枢で意思決定が行われる体制を構築しています。

(この続きは) 
■「やっているだけ」から始まったサステナビリティ変革
■成功のカギ①:理念との接続で「腹落ち」を生む
■成功のカギ②:あえて「高い目標」が全社を動かした
■成功のカギ③④:「仕組み化」と「文化」への転換
■次のフェーズへ、事業部門がイノベーションの主役になる
■創業理念に宿るサステナビリティのDNA

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yoshida

吉田 広子(オルタナ輪番編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。2025年4月から現職。執筆記事一覧

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キーワード: #サステナビリティ

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