記事のポイント
- タイ・バンコクで「責任あるビジネスと人権フォーラム」が開催された
- テーマは「危機下における人権の進歩の促進と地域のリーダーシップの強化」だ
- タイや韓国などでは人権デューディリジェンス義務化の議論が進む
■企業と人権、その先へ(15)
タイ・バンコクで「アジア・太平洋 責任あるビジネスと人権フォーラム」が9月15日から4日間、開催された。今年のテーマは「危機下における人権の進歩の促進と地域のリーダーシップの強化」だ。企業の人権対応が問われる中、タイや韓国などでは人権デューディリジェンス義務化の議論が進む。(客員論説委員/弁護士・佐藤暁子)
「アジア・太平洋 責任あるビジネスと人権フォーラム」は2017年から開催されている。この地域に特化してビジネスと人権の取組みや課題を議論する場として活用されている。
今年は、政策の一貫性と規制の進化、市場・金融・サプライチェーン、包摂・保護・参加、持続可能性とトランジションといったテーマを軸に、国連機関や市民社会、企業、業界団体などが提案した80以上のセッションが実施された。
米国の関税政策などによる経済的な逆風や貿易摩擦、強権的な政権による市民社会スペースの縮小、規制の不確実性、労働搾取と差別、政府などによる監視、環境悪化、汚染、また気候変動による移住問題など、この地域でも複合的な課題が浮き彫りになっている。
さらに、経済的格差の拡大やESG、多様性・包摂性といった取組みに対するバックラッシュは、ビジネスと人権の取組み促進を脅かす要素でもある。
しかし、欧米の現在の状況を踏まえると、アジアは地域としての重要性が今まで以上に高まっている。
フォーラムでも、アジアがどのようにオルタナティブを示していけるのか、課題解決の取組みを通じてどのように持続可能な社会の構築に貢献できるのか、強い期待が示されていた。
(この続きは)
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