「石油・石炭の需要は30年までにピークアウト」とIEA報告書

記事のポイント


  1. 石油・石炭の需要は2030年までにピークに達し、再エネの成長は加速する
  2. 国際エネルギー機関(IEA)が最新報告書の中で見解を示した
  3. 今世紀末の気温上昇を1.5℃以下に抑える道筋は依然、存在することも示した

国際エネルギー機関(IEA)は11月12日、最新報告書「世界エネルギー展望2025」を公開した。報告書は、石油・石炭の需要が2030年までにピークに達し、再エネは他の主要エネルギー源よりも速く拡大するとの見方を示した。さらに、今世紀末の気温上昇を1.5℃以下に抑える道筋は、依然として存在することも示した。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

国際エネルギー機関(IEA)の最新報告書によると、
再エネ拡大は今後も加速し、
石油・石炭の需要は2030年までにピークに達する

国際エネルギー機関(IEA)は11月12日、最新版の報告書「世界エネルギー展望2025」を公開した。今年の報告書は「エネルギー安全保障」をテーマに掲げた。

2015年以降、世界は電力需要の急増に対応するため、発電設備への投資を約7割拡大し、その規模は年間1兆ドル(約154兆円)に達した。一方で、送電網への年間投資は4000億ドル(約62兆円)にとどまっており、新規送電網や蓄電、システムの柔軟性などの整備が課題だとまとめた。

■トランプ政権の圧力がシナリオに影響する

一方、IEAが報告書で用いるシナリオに関しては、米共和党ならびに米トランプ政権が、1年以上にわたって圧力をかけてきた影響も垣間見えた。

IEAはここ数年、現行政策だけでなく、開発中や発表済みの政策も考慮した「中心シナリオ(表明政策シナリオ:STEPS)」を活用してきた。しかし今回は、この「中心シナリオ」に加えて、5年ぶりに、すでに実施されている政策だけを考慮する「現行政策シナリオ(CPS)」も復活させた。

「現行政策シナリオ」は、化石燃料への需要がより高く推計される傾向があるほか、新エネルギー技術の導入についても、「中心シナリオ」より慎重に見積もる。

■石油・石炭需要は頭打ち、再エネは力強く成長を続ける

IEAは、石油・石炭の需要が2030年までにピークに達するとの見方(中心シナリオ)を示した。

再エネについては、どちらのシナリオにおいても、他の主要エネルギー源よりも速いスピードで成長を続けていく。なかでも中国は、今後10年間、世界の再エネ導入量の45~60%を占める最大市場であり続けると同時に、ほとんどの再エネ技術の最大の製造国としての地域を維持していくと見通す。

太陽光パネルや電池の豊富な生産能力は、その多くが中国に集中する。こうした生産能力は価格競争力にもつながるが、一部市場では懸念材料にもなっている。2024年には、太陽光PVモジュールは実際に導入する量の2倍以上の製造能力に達し、電池セルも同様にほぼ3倍の製造能力となった。

EVを含めた中国の新エネルギー技術の輸出は、輸出貨物全体の約5%を占めるまでに成長し、中国企業はインドネシア、モロッコ、ハンガリー、ブラジルなど、海外での製造設備への投資を進めている。発展途上国においては、コスト競争力のある新たなエネルギー技術にアクセスできる大きな機会となる一方で、新しいバリューチェーンで中国が支配的になることへの懸念も、報告書は示した。

■新規LNGプロジェクトの急増に疑問も
■データセンターやEVの見通しも示す
■エネルギー展望で確信を持って言える4つのこと
■エネルギー安全保障は、需要鉱物争いに
■気温上昇を「1.5℃以下」に抑える道筋も示す

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北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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