記事のポイント
- 日本のGX政策が、世界の「脱炭素」潮流と大きく乖離(かいり)してきた
- 気候政策シンクタンクの代表が、GX政策について5つのポイントを指摘した
- パリ協定の「1.5℃目標との整合性」や「ゼロエミ火力の削減効果」などだ
オルタナ本誌78号(10月3日発売予定)では、「日本のGX(グリーントランスフォーメーション)はガラパゴス」という第一特集を組んだ。なぜガラパゴスなのか。気候政策シンクタンクNGOクライメート・インテグレートの平田仁子・代表理事は5つのポイントを挙げた。(オルタナ副編集長=池田 真隆)
GXの論点の一つは、「1.5℃目標」との整合性だ。GX政策の重点は産業振興に置かれており、分野別の今後10年程度の国内削減目標が大括りでは示されているが、各技術選定による費用対効果や温室効果ガス排出削減効果などは示されていない。
そのため、パリ協定に基づく1.5℃目標との整合性、さらに電力部門を2035年までに脱炭素化するというG7合意などとの整合性は不透明だ。
150兆円超の官民投資の対象には、自動車や蓄電池、再エネなどが大きく位置付けられているが、同時に、石炭・LNG火力発電における水素・アンモニア混焼、次世代革新炉、CCS(二酸化炭素回収・貯留技術)など、適格性について議論が必要な技術も含まれている。
政府はそれぞれの技術の1.5℃目標との整合性や、各事業の削減効果や費用対効果などの妥当性を評価するための根拠となる数字を示す必要があるだろう。
二つ目は、「ゼロエミッション火力の削減効果」だ。GX政策では、火力発電の継続利用を前提に、石炭・LNG火力発電での水素・アンモニア混焼・専焼を推進する。
1.5℃目標と整合させるためには、電力セクターは35年にネットゼロを実現することが必要だが、これらの技術はまだ確立しておらず、非常に高コストだ。30年時点では排出削減効果はほとんど見込めない。それ以降の導入予測も難しいため、火力発電所の延命策に過ぎない。
■CCSも効果は低い