再エネ電気料金から石炭火力・原発にお金が流れる

電力の安定供給を確保する名目で2020年に始まった「容量市場」に、環境NGOなどから批判の声が上がっている。すでに2回の入落札が終わり、電力の小売事業者は「4年後の電気代」として発電事業者に容量拠出金を支払う。しかしこれが、石炭火力や原発の延命につながるという。(オルタナ編集部・長濱慎)

国は「容量市場」の必要性を強調するが…(資源エネルギー庁ホームページより)

■国は「再エネ主力電源化」に火力が必要と強調

容量市場は2016年の電力小売全面自由化と、20年の発送電分離を受けて設立した。それまで電力事業者は必要なコストをすべて計上する「総括原価方式」が認められ、発電所(火力や原子力)の維持管理費用を電気料金から回収できていた。

しかし電力自由化によってコスト回収が難しくなれば、発電所を維持ができないとの理由で、政府は「容量市場」を設けた。経済産業省・資源エネルギー庁は、次の理由でその必要性を強調する(資源エネルギー庁の資料から抜粋・編集)。

1)再エネの普及が進むなか、FIT(固定価格買取制度)で費用を負担している再エネ電源を売り出す時間帯(太陽光発電では晴れた日の日中)は市場価格が低下し、すべての電源の売電収入が少なくなる。その結果、発電所の維持や新規建設への投資が困難になる。

2)再エネは季節や天候によって出力が変わるため、変動のバランスを取るために火力発電が必要。火力の維持や建設が困難になれば、そこに調整を任せている再エネを増やすことも難しくなる。そうなると受給ひっ迫が起きて電力が不足し、電気料金が上昇し、最悪の場合は停電になる恐れもある。

■再エネ新電力が石炭火力・原発の延命を支える構造

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S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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