記事のポイント
- ブラジル・ベレンで行われていたCOP30が11月22日に閉幕した
- 期待されていた「化石燃料の段階的廃止」に向けた文言は盛り込まれなかった
- 海外メディアや国際NGOなどは、野心を欠く内容だと評する
ブラジル・ベレンで開催されていたCOP30(国連気候変動枠組条約第30回締約国会議)が11月22日(日本時間)、閉幕した。世界の平均気温が通年で1.5℃を超えてから初めて迎えたCOPだったが、期待の大きかった「化石燃料の段階的廃止」に向けた文言は、最終合意文書に盛り込まなかった。気候危機の要因である化石燃料からの脱却について、80カ国以上が前進させようとの動きを示したが、「全会一致」の制約が合意文書のトーンを弱める形となった。今後1年、議長国ブラジルが協議を続けていくと約束した。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子、池田真隆)

COP30は合意文書に、期待の大きかった「化石燃料からの脱却」を盛り込めなかった
(写真) Ueslei Marcelino/COP30
■「1.5℃」を超えてから初開催のCOPに
今回のCOP30はいろいろな意味で、「初めて」の多いCOPだった。開催地を「地球の肺」と言われるアマゾンの河口・ベレンとし、「森林COP」を表象したほか、米連邦政府からの代表団が一人も参加しない包括的な国際会議という点も初だ。
そして何より、世界の気温上昇が通年で「1.5℃」を超えてから迎える初のCOPでもあった。
ちょうど10年前のパリ協定の採択で、産業革命前からの気温上昇を「2℃より十分に低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求する」ことに合意した。しかし世界気象機関によると、2024年は通年で産業革命前から1.55℃の気温上昇となった。
すでに人為的な気候変動の影響により、世界各地で気候災害として顕在化している。これがCOP30を迎えた私たちの現在地だ。
しかし、「1.5℃目標」の達成に向けて各国が提出する排出量の削減目標(次期NDC)については、80カ国近い国が未提出だった。また国別削減目標を各国がすべて実施したとしても、今世紀末には1.5℃はおろか、2℃を上回ることを、国連「排出ギャップレポート」が報告している。
CO2の排出量は2025年も過去最高を更新する見込みとの報告も出た。このペースで排出が続けば、1.5℃以内に抑えるためのカーボンバジェット(炭素予算)はあと4年で使い切るという。
人類や地球が後戻りできない変化を起こすティッピングポイント(臨界点)への到達も近いとの指摘もある。海水温の上昇によってすでにサンゴ礁の多くが白化または死滅状態となるティッピングポイントを超えたとされる。
こうした気候危機に歯止めをかけるための最優先事項は、科学者らが温暖化の直接的な原因だと指摘する、石油・ガス・石炭などの「化石燃料」からの脱却だ。
だが、最終合意文書から、「化石燃料」の語句は外された。
■「化石燃料廃止ロードマップ」策定に日本は賛同せず
COP開催前、ブラジルのルラ大統領はこれまでの「交渉のCOP」から「実行のCOP」へ移行させると強い意気込みを見せていた。議長国ブラジルの主導で、COPの序盤から、化石燃料の脱却と森林破壊を防ぐための実行可能なロードマップの策定に向けた機運も高まった。
なかでも「化石燃料廃止ロードマップ」は、気候変動対策を積極的に推進しようとする国々らを中心に、COP30の第2週目に入って加盟国全体の43%に相当する80カ国超*の賛同を集めた。
ノルウェーやメキシコ、ブラジルなど、石油・ガス産出国も賛同を示した。石炭火力からの脱却を表明した韓国も名を連ねた。
*「化石燃料廃止ロードマップの策定」賛同国(アルファベット順)
アンティグア・バーブーダ、オーストラリア、オーストリア、バハマ、バーレーン、バルバドス、ベルギー、ベリーズ、ブラジル、ブルガリア、カーボベルデ、チリ、コロンビア、コモロ、クック諸島、コスタリカ、クロアチア、キューバ、キプロス、チェコ、デンマーク、ドミニカ、ドミニカ共和国、エストニア、フィジー、フィンランド、フランス、ジョージア、ドイツ、ギリシャ、グレナダ、グアテマラ、ギニア・ビサウ、ガイアナ、ハイチ、ホンジュラス、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、ジャマイカ、ケニア、キリバス、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルグ、モルディブ、丸太、マーシャル諸島、モーリシャス、メキシコ、ミクロネシア、モナコ、モンゴル、ナウル、ネパール、オランダ、ニウエ、ノルウェー、パラオ、パナマ、パプアニューギニア、ペルー、ポルトガル、韓国、ルーマニア、サモア、サントメ・プリンシペ、シエラレオネ、スロバキア、スロベニア、ソロモン諸島、スペイン、セントクリストファー・ネービス、セントルシア、セントビンセントおよびグレナディーン諸島、スリナム、スウェーデン、スイス、東ティモール、トンガ、トリニダード・トバゴ、ツバル、英国、バヌアツ
しかし、これらの国々が、化石燃料の生産全体に占める比率は7%、消費に占める比率は13%に過ぎない。
結果的に、このロードマップの策定はおろか、最終合意文書には「化石燃料」の文言すら入らなかった。
コロンビアのグスタボ・ペトロ大統領は、合意文書が採択された直後、SNSに「COP30の宣言で、科学が述べるように、気候危機の原因が資本が使用する化石燃料であると明確に述べられないことを、私は受け入れません。それが述べられなければ、他のすべては偽善です」と投稿し、骨抜きの合意文書を痛烈に批判した。
複数の海外メディアによると、サウジアラビアやロシアなどの主要な化石燃料生産国や、インド、中国から強い反発があったというが、日本もこのロードマップの策定には賛同していない。
国際環境NGOの350.orgジャパンの伊与田昌慶キャンペーナーは、「COP30ベレン会議は、日本がパリ協定の1.5℃目標達成に貢献せず、化石燃料依存が招く気候災害リスクや社会経済的損失から国民を守ることができていないことを改めて証明した」と失望の意を表した。
「80カ国以上の国々が脱化石燃料ロードマップづくりを支援した中、これに背を向けた日本の気候政策における意欲の欠如は、ベレンでも明らかだった。韓国が石炭火力発電の段階的廃止の宣言に加わったのとは対照的に、日本はいまだに石炭火力発電所の増設計画『GENESIS松島』すら抱えている」(同)
■「森林破壊を止めるロードマップ」も盛り込めず
■海外メディアの見出しは失意に溢れる

