記事のポイント
- PRIの新CEOに、12月1日付でカンブリア・アレン・ラツラフ氏が就任
- 責任投資分野で約20年の経験を持ち、2年前にPRIに参加した
- サステナビリティ課題の財務的マテリアリティ強化など、成長戦略を主導する
責任投資原則(PRI)の新CEOに、12月1日付でカンブリア・アレン・ラツラフ氏が就任した。責任投資分野で約20年の経験を持ち、2年前にPRIに参加した。責任投資が転換点を迎える中、サステナビリティ課題の財務的マテリアリティ強化など、同氏は成長戦略を主導する。(オルタナ輪番編集長・吉田広子、在ニューヨーク・古市裕子)

責任投資原則(PRI)は2025年5月、デイビッド・アトキン前CEOが2026年に退任する計画を発表したことを受け、次期CEOの選定プロセスを開始した。アトキン前CEOは「責任投資は今まさに転換点にある」として、組織改革を進めてきた。
こうした中で就任したアレン・ラツラフCEOは、責任投資分野で約20年の経験を持ち、約2年前にPRIに加入した。
これまで、非営利の調査機関 JUST Capital でマネージング・ディレクター兼投資家戦略部門責任者を務めたほか、UAW退職者医療給付トラストやコネチカット州財務長官室 でシニア職を歴任した。米証券取引委員会(SEC)の投資家諮問委員会や Council of Institutional Investors(CII)など、投資家主導の委員会でも活動してきた。
PRI理事会のコナー・キーオ議長は、「実績を重ねてきた信頼できる実務リーダー」と高く評価する。元アセットオーナーとして、投資家のニーズを的確に理解している点も強みとされている。
アレン・ラツラフCEOは、「PRIの20年の進展と膨大なデータは、サステナビリティ重視の戦略が長期的価値の向上とリスク低減につながることを示している。地政学的に揺れる状況でも、私たちは署名機関の長期的な金融的利益に資する取り組みを引き続き支援していく」とコメントしている。
PRIは今後、次の取り組みを強化する方針だ。
・刷新したデジタルプラットフォームの提供
・資産保有者への支援の強化
・新興市場でのプレゼンス拡大
・サステナビリティ課題の財務的マテリアリティの一層の強化
反ESGの圧力が強まる中、PRIはトランプ政権と対峙することになる。PRIは、元米国責任者による「署名機関側の懸念を指摘したことへの報復」とされる訴訟にも直面している。
一方で、アレン・ラツラフCEOは民主党系とされ、ESG論争が続く中でも揺るがない姿勢が評価されている。ESGへの逆風や訴訟リスクがある環境下でも、一貫して施策の実施やステークホルダー支援を継続してきた。



