記事のポイント
- 台湾のサステナブルファッションブランドが衣類・食器用洗剤を生み出した
- バイオ技術企業や台湾海洋大学と連携し、廃棄される貝殻を有用な原料に転換した
- 環境にダメージを与えない洗剤として、包装素材もゼロウェイストにこだわる
台湾のサステナブルファッションブランドが、衣類・食器用洗剤を生み出した。バイオテクノロジー企業と連携し、台湾東部の漁場で採れた食用シジミの貝殻を再利用して抗菌・消臭パウダーを開発した。包装の素材や形にも、徹底したゼロウェイスト(廃棄物ゼロ)の設計にこだわる。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

台湾でサステナブルファッションブランドを展開する「picupi挑品(ピクピ)」は、バイオテクノロジー企業の仲潔生物科技と連携し、シジミなどの貝殻を高温で焼成した抗菌・消臭パウダーを開発した。
牡蠣やアサリ、シジミなどの貝殻は、漁業や養殖場で発生する一次的な漁業廃棄物だ。貝殻を有効的に再利用する方法はまだ多くなく、長期にわたって放置・堆積させると土壌汚染につながるとの指摘もある。
台湾東部・花蓮(ホワリエン)の立川漁場では、日本ではあまり見られない黄金色に輝く「黄金シジミ」を食用やエキス抽出用に養殖する。しかしそこで発生する貝殻の廃棄量は、自然の風化だけでは処理しきれない水準に達する。
そこでピクピは仲潔生物科技、台湾海洋大学との産学連携で、廃棄される黄金シジミの殻を有用な原料へと転換する技術開発を進めた。そうして開発したのが、貝殻から作られたリサイクル洗剤だ。
漂白剤や防腐剤は含まず、界面活性剤を含む全ての成分を植物由来ベースとしながら、除菌率99%と、洗剤としての性能も損なわない。使用後の排水も、水中の微生物や土壌微生物により分解される。
■台湾発の循環をアジア、そして世界へ
ピクピの創業者・張倞菱氏は、一人娘が発した「前の世代の過ちの責任を、なぜ次世代が背負わなければいけないのか」という言葉で行動を起こした。
ファッションデザイナーでもあり、ファッション誌の編集長でもあったキャリアから一転、サーキュラーエコノミーでファッション業界にイノベーションを起こすことを目指して、サステナブルファッションブランド「picupi」を創業した。
在庫ゼロ・廃棄物ゼロの受注生産方式の下着などを開発・販売しながら、さらなる一歩として進めたのが、環境に永続的にダメージを与えることのない洗剤の開発だった。
製品は「ゆりかごからゆりかごへ」のサーキュラーエコノミーを前提に、原料調達・製造・包装・輸送・消費者使用・廃棄までの全工程で、ゼロウェイストを徹底する。
パッケージは輸送時の積載効率と緩衝材の削減からスクエア型とし、容器は再利用時の素材純度を高めるため、印刷を行わずプラ製フィルムやプラ製シールは使わない。
オルタナの取材に対し、張氏は「私たちが目指すのは、環境への負荷を『減らす』ことではなく、最初から廃棄物を生まない仕組みをつくることだ。衣類も洗剤も、使い終わった後に次の価値へとつながる設計なら、日々の暮らしそのものが循環になる」と語る。
そして「台湾で生まれたこの小さな循環を、アジア、そして世界へ広げていきたいと思う」と意気込んだ。



