キリンも実質的に中計廃止、長期目標に合わせて毎年見直しへ

記事のポイント


  1. キリンHDは3カ年で固定していた中期経営計画を実質的に廃止した
  2. 単年度計画を3年分策定するが、毎年、見直し、外部環境の変化に対応へ
  3. 味の素も2023年に経営戦略の一環として中計を廃止した

キリンホールディングスは3年間固定していた中期経営計画を実質的に廃止した。同社はこれまで3年間固定の中計を立てていたが、単年度計画を3年間分策定し、その計画を毎年、見直す仕組みに変えた。外部環境の変化の激しさが増す中、3~5年先の社会・経済状況を予測しづらくなってきたことが背景にある。味の素も2030年までの経営戦略として中計を廃止した。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

キリンは2025年度から固定式の中計から「ローリング方式の中計」に切り替える。 出典:キリングループ「2027年に向けた計画」

固定式の中計からローリング式の中計に

キリンホールディングスは、2025年度から3カ年固定の中計を廃止し、ローリング方式の中計に切り替えた。ローリング方式の中計では、毎年、単年度の計画を3年間分策定する。

年度終了時に3年後の予想が想定内だった場合には、その延長線で計画を立てるが、予想外の事態が発生した場合には、状況に合わせて目標を再設定するようにした。

ウクライナ侵攻など予測困難な変化相次ぐ

同社は2022年中計として2022年~2024年の計画を立てていたが、策定当初には予想できなかった環境変化が相次いだ。

2021年にはミャンマーのクーデターによって同国軍系企業との合弁事業(ミャンマー・ブルワリー)の事業撤退を決めた。ロシアのウクライナ侵攻によって世界的なインフレも起きた。こうした想定外の大きな外部環境の変化もあり、中計で定めたROIC目標は未達に終わった。

固定式からローリング方式の中計に切り替えた背景には、外部環境に柔軟に対応する狙いがある。

一方で同社は長期目標は変えない。同社は2019年に2027年までの長期経営計画「キリングループ・ビジョン2027(KV2027)」を策定した。短中期的な目標を毎年見直しながら、長期経営計画で掲げた「世界的なCSV先進企業」を目指す。

役員報酬も長期目標への達成度合いに応じて連動するように設定した。長期目標を軸に持ち続けながら、足元の変化に柔軟に対応できる組織体制を築くことを狙う。

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M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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