米国では反ESG の動きが増す一方で、ESG 投資への影響は限定的であり、サステナビリティに向かう流れは変わらないとする見方もある。日本の金融行政に影響はあるのか。池田賢志・金融庁チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー(CSFO)に聞いた。(オルタナ副編集長・吉田 広子)
池田 賢志(いけだ・さとし)
金融庁CSFO(チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー)。2019 年3月、初代CSFOに就任。民間金融におけるSDGs との整合性向上や、事業者及び金融機関によるTCFD 開示の推進などの課題に取り組むほか、IPSF トランジションファイナンスワークストリームの共同議長、「インパクト投資に関する勉強会」の副座長を務める。
米国では、党派的な価値観に基づく二極化、そして分断が進んでいる。反ESG法の制約を受けて、米国の金融機関を中心に、ESGを前面に出しにくい状況なのは確かだ。
仮に再びトランプ政権が誕生するとなれば、パリ協定からの離脱に加え、フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)に関するルール変更が起きる可能性も否定できない。
しかし、ESGの要素が企業価値に影響を与えるという基本的な考え方は、すでに世界的に浸透しており、短期的な政治動向によって揺らぐものではない。ESG投資は世界的に拡大し続けている。
ESG投資の手法は多岐にわたるが、ESG要素を投資の意思決定プロセスに組み込む「ESGインテグレーション」は、反ESG法の影響を受けにくいだろう。
米国の反ESG法が問題視する投資は「バリューズ(価値観)」に基づくESG投資であるのに対し、日本で主流のESG投資は「バリュー(企業価値)」に着目している点で異なっている。
日本では、E S G 投資は、あくまで企業価値の向上と持続的な成長に重きを置くものとして成長してきた。冷静に分析すれば、反ESGの動きが、日本の金融行政や投資家に与える影響は限定的だろう。
■投資家と対話続けよ