77号第一特集「米大統領選の行方とESG」

米国で、共和党による反ESG(環境・社会・ガバナンス)の圧力が増している。その背景には、2024年11月の大統領選挙を控え、共和党と民主党の熾烈な「つば競り合い」がある。トランプ候補は公約で「急進左翼のESG投資から米国人を守る」とまで言い切り、「再びパリ協定から脱退する」ことを明言した。そうなると各国の脱炭素や人権政策にも大きな影響は避けられない。(オルタナ論説委員/東京大学大学院新領域創成科学研究科サステイナブル社会デザインセンター特任研究員・御代田有希)

反E S G とは、米国で2021年ころから見られる、ESG投資への反発である。保守系シンクタンクによるキャンペーンが、共和党が強い州(赤い州)における反ESG規制の策定や、株主総会における反ESG提案につながった。

24年6月時点では、米大統領選挙の帰すうについて、多くのメディアは、「トランプ候補対バイデン大統領」の一騎打ちを想定している。無所属のロバート・ケネディ候補が第三極になるとの見方もあるが、二大政党制が定着した米国で、政党に所属しないことによるハードルは大きい。

米ニューヨーク・タイムズ紙が24年5月に実施した世論調査によると、米国大統領選挙は、ペンシルベニア(PA)州やミシガン(MI)州、ウィスコンシン(WI)州などの激戦州「スイングステート」(投票先が振り子のように揺れるという意味)で、トランプ候補が優勢との結果だった。トランプ氏再選の場合、反ESGの流れがさらに強まることが見込まれる。

(この続きは)
■赤い州対青い州、規制の違いは
■ブラックロック社、ESG巡る変遷
■NZIAが廃止、新組織を設立
■化石燃料産業と「時間軸の悲劇」
■「もしトラ」でも脱炭素化は続く

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御代田 有希(オルタナ論説委員/東京大学大学院 新領域創成科学研究科サステイナブル社会デザインセンター特任研究員)

御代田 有希(オルタナ論説委員/東京大学大学院 新領域創成科学研究科サステイナブル社会デザインセンター特任研究員)

オルタナ論説委員。博士(法学)。東京大学大学院新領域創成科学研究科サステイナブル社会デザインセンター特任研究員。研究関心は、グローバル・ガバナンス、持続可能な開発目標(SDGs)、ESG投資。慶應義塾大学法学部卒業後に株式会社三菱東京UFJ銀行(現MUFG銀行)にて勤務し、退職後一橋大学国際・公共政策大学院へ進学。その後同大学院法学研究科の博士課程在籍中に、米国農務省およびESG投資を始動させた国際団体である責任投資原則(PRI)にて勤務した。博士号取得後は、一橋大学大学院法学研究科特任講師(ジュニアフェロー)を経て現職。リカレント教育を中心とした同大学院新領域創成科学研究科サステイナブル・ファイナンス・スクールの運営に携わり、学問分野横断的な知見と実務の融合を目指す。

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キーワード: #ESG

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