記事のポイント
- 米国大統領選挙を控え、共和党対民主党の「ESG」論争が激化してきた
- 米国では2021年ごろから「反ESG」の様相が強まっている
- 国際イニシアティブから金融機関脱退の裏に共和党からの揺さぶりも
米国で「ESG」と「反ESG」の論争が一層、いっそう熱を帯びてきた。その背景には、2024年11月の米大統領選に向けた共和党と民主党の「つば競り合い」があり、共和党陣営が「反ESG」の動きを裏で後押ししているとの見方が根強い。その構図を探った。(オルタナ論説委員/東京大学 大学院新領域創成科学研究科 特任研究員・御代田有希)
■米国での反ESGの広がり
責任投資原則(PRI)の署名機関が一堂に集う年次総会「PRIイン・パーソン」で2023年10月、米国で起きている「反ESG」について新たにセッションが加わった。ESG投資家の間で、ESGの揺り戻しを無視できなくなっていることがうかがえた。
とはいえ、実際に登壇した講演者やパネリストには、「反ESGの感情は、一時的な政治的問題」として片付けるトーンがあった。しかし、「PRIイン・パーソン」開催後の展開をふまえると、それはやや楽観的だったといえよう。
実際、「オルタナ」本誌がすでに伝えたように、環境やESGへの取り組みについて公表を控える「グリーン・ハッシング」が頻発している。さらに憂慮すべきは、ネットゼロ保険同盟(NZIA)のみならず、クライメイト・アクション100+(CA100+)、エクエーター(赤道)原則などの国際イニシアティブから大手金融機関の脱退が広がっている点である。
特に2024年3月上旬、日本の三井住友銀行のほか、米シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴ、JPモルガン・チェースの米大手4行が一斉にエクエーター原則から脱退を表明したのは衝撃的だった。
エクエーター原則は2003年に成立したイニシアティブで、金融機関が大規模な開発や建設を伴うプロジェクトに参加する場合に、当該プロジェクトが自然環境や地域社会に与える影響に十分配慮して実施されることを目的にした。
同原則は世界銀行グループの国際金融公社(IFC)が中心となり、シティグループなどいくつかの民間銀行が先導的な役割を果たした。それだけに、シティの離脱のインパクトは大きい。
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■国際イニシアティブからの脱退の背景
■共和党と民主党はESGで真逆の政策を展開