記事のポイント
- 2026年4月から、改定版の国別行動計画(NAP)が施行される予定だ
- 2026年はビジネスと人権に関する指導原則承認から15 年という節目でもある
- 脱炭素化やAIなどを巡り、依然として多くの課題が残されている
■オルタナ83号(2025年12月発売号)特集「サステナメガトレンド2026」から転載
日本では2026年4月から、改定版の国別行動計画(NAP)が施行される予定だ。さらに国連「ビジネスと人権に関する指導原則」承認から15 年という節目の年でもある。この間、企業の取り組みが大きく進展した分野がある一方で、依然として多くの課題が残されている。(オルタナ客員編集委員/弁護士・佐藤暁子)
2025年は世界的に人権デューディリジェンス(DD)法制化が大きく動いた年だった。
義務化を主導してきたEUでは、24年に採択した「企業持続可能性デューディリジェンス指令(CSDDD)」に対し、簡素化を求めるオムニバス法案が提出された。NGOのみならず企業からも「人権DDの実効性が損なわれる」と批判を招いた。
その後、欧州議会は25年11月、対象企業の見直しや気候変動に関する移行計画の策定義務の除外といった修正案を採択した。
だが、ステークホルダーエンゲージメントを含む人権・環境DDの義務化や国内における民事責任という基盤は維持されている。
さらに、法制化の動きは欧州に限らず、韓国やタイ、インドネシアなどアジア各国にも確実に広がっている。トランプ政権下の米国も、ASEAN諸国や韓国との間で、強制労働への対策強化を相次いで合意した。企業を取り巻く説明責任の強化という潮流は、今後も後退することはないだろう。

