■イオングループの役割はきっかけを作ること
「イオングループの役割はあくまで『きっかけ』作りであり、地元主導の動きのお手伝い」と今俊幸さん(イオンリテールエリア政策推進本部フードアルチザングループ)は強調する。「結果、生産量が増えて地元が潤うことが目的」(今さん)。
商品開発も、イオングループのプライベートブランドだけでなく、皆でアイディアを出し合った結果、地域のメーカーが作り、道の駅などで売られる場合もある。昨年は地域で元々あったアイディアを共に発展させ、「山ぶどう」をテーマに久慈地方の料理人の方々とコラボした、地域特産物の賞味会を開催。イオングループからの紹介で、南青山に店を構えるシェフ、岸本直人さんをメインシェフに招聘した。多数の参加者が集まり、創意工夫を凝らした料理は地域食材の可能性を広げ、盛況に終わった。

今年は昨年の賞味会を踏まえ、久慈地方で独自に「久慈地域特産物を味わう会」を11月14日に実施する。2014年に東京から久慈に移り活躍するシェフ、白鳥恒夫さんをメインシェフに、山ぶどうに限らず久慈食材全般の魅力を伝える会だ。美味しい料理や飲み物を楽しむだけでなく、生産者や料理人から食材に対するこだわりや魅力を聴くこともできるイベントで、今年も広く一般参加者を募集している。
イオンリテールも、次の動きに向けてパンやスイーツなどを試作中だ。10月26から27日にかけては、グループ内の旅行会社イオンコンパスとタイアップし、久慈・宮古周辺で「フードアルチザンの産地訪問ツアー」を実施。東北6県から集まった参加者は、周辺の観光地のほか、山ぶどう農園やワイナリー訪問を楽しんだ。
生産者と消費者が直接会話のできる場の創出は、顔の見える関係づくりによって久慈の山ぶどうファンを増やすだけでなく、生産者にとっては、作った先の人たちの考えやニーズを知るきっかけにもなる。
山ぶどうが注目される機会が増えるなか、生産者の気運も高まりつつある。生産者は高齢化が進むが、生産農家内の若い方が新たに生産に加わるという動きも出ているという。また、フードアルチザン活動とは別に、野田村の第三セクターにより、村に山ぶどうのワイナリーを造る計画も今春発表されている(2016年完成予定)。生産者をめぐる各方面の動きが相乗効果を生み、山ぶどうの盛り上がりが、久慈地方での復興への後ろ支えともなっていくことを期待したい。
◆いわて三陸復興のかけ橋「復興トピックス」
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