記事のポイント
- 戸田建設などは長崎県五島沖で浮体式洋上風力発電所の商用運転を始めた
- 風車8基から構成しており、大規模施設としての商用化は国内で初めて
- 浮体式は深海域でも設置でき、同社は将来的な市場規模を524兆円と見込む
戸田建設や大阪ガス、INPEXなどは2026年1月5日、長崎県五島沖で浮体式洋上風力発電所の商用運転を始めた。この発電所は風車8基(出力16.8メガワット)から構成しており、大規模施設としての商用化は国内で初めて。浮体式洋上風力は深海域でも設置できることが特徴で、戸田建設は市場規模を524兆円と見込む。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

長崎県五島市沖で計画が進められてきた浮体式洋上風力発電所「五島洋上ウィンドファーム」が、1月5日、国内で初めて複数機による商用運転を始めた。海洋再生可能エネルギー発電設備の整備促進を目的とした「再エネ海域利用法」に基づく認定を受けた第1号案件だ。
同発電所は、風車8基から構成される浮体式洋上風力発電設備として設計された。海上における発電の安定性と効率性を両立させるハイブリッドスパー型浮体を採用した。
浮体上部は鋼、下部はコンクリートで構成され、この技術は代表企業である戸田建設が設計から施工まで一貫して担った。
同プロジェクトには、代表企業の戸田建設のほか、ENEOSリニューアブル・エナジー、大阪ガス、INPEX、関西電力、中部電力が参画し、五島洋上ウィンドファーム合同会社(SPC)が主体となって進めてきた。
地域企業も多く工事に関わり、今後の運用管理にも関与する方針だという。発電した電力はエネルギーの地産地消の観点から、地元の小売電気事業者へ優先的に供給する予定だ。
洋上風力発電は、陸上設置が難しい広大な海域を活用することで大規模発電が可能となる再生可能エネルギーの柱として期待されている。しかし、洋上風力は建設・保守管理に多大なコストと技術が必要であり、特に海底基礎を設ける従来方式では導入が局所的に留まる課題があった。
浮体式は海底地形の制約を受けにくく、深海域でも設置が可能な技術として注目される。今回の商用化は、 実用性と経済性の両立を示した成果として評価され、今後の国内外プロジェクトへの応用が見込まれる。
地域の産業振興や雇用創出にも寄与すると期待され、地元関係者や参画各社は、長期的な運営を通じて再生可能エネルギーの普及促進と、地域の暮らしの質向上に貢献していく考えだ。
■設置可能エリアは領海内の10倍に
戸田建設の今井雅則会長が浮体式洋上風力に目をつけたのは2013年ごろからだ。今井会長は2013年6月に社長に就任したが、就任前直近の決算では赤字が続いていた。再生プランを練っていた際、建設業だけでは価格競争に陥りやすいため、もう一つの柱が必要だと考えた。
その当時から異常気象の兆候は見えており、同社も小水力、太陽光、陸上風力など様々な再生可能エネルギー事業に取り組んでいた。単なる価格競争にならないよう、この分野で強みを持ちたいと考え、浮体式洋上風力に行きついた。
浮体式洋上風力発電の設置可能エリアはEEZ(排他的経済水域)を含めると、領海内の10倍に及ぶ。今井会長と同社洋上風力部門の試算では、2050年に、もし日本の全エネルギーの半分を浮体式洋上風力発電でまかなった場合、総産業規模は524兆円の市場になると見込む。
今後の課題は大型化・大量生産だが、そのポテンシャルは大きい。NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は日本の洋上風力のポテンシャルについて、国内の一次エネルギー消費量の約1.8倍に相当すると試算した。
政府は毎年約20兆円を払って、石炭・天然ガス・石油を輸入するが、風資源を活用することでエネルギー収支を改善し、エネルギー安全保障の確立にも貢献できる。
同社のように浮体式洋上風力発電に事業者・技術開発者・施工者として総合的に取り組める企業は少ない。カーボンニュートラル社会から逆算して、「生き残り戦略」として取り組む。



