「米国の政治混乱が世界最大のリスク」と米国の有力コンサル

記事のポイント


  1. 米コンサルのユーラシア・グループは、米国の政治混乱が最大のリスクと公表
  2. 大幅な予算削減は、災害対応、感染症流行の追跡等の政府の能力を低下させる
  3. メディアは、トランプ支持派の手中に収まる可能性がある

ユーラシア・グループは、 2026年世界10大リスクを公表し、「米国の政治混乱*」を最大のリスクとした。「トランプが政権に戻る前から、米国の政治システムは先進工業民主主義国の中で最も構造的に機能不全に陥っていた。トランプの取り組みが成功しようが失敗しようが、以前の状態に戻ることはない」と断じた。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

*ユーラシア・グループのレポートでは「政治革命」との表現を使いましたが、日本の読者にはわかりにくいこともあり、本稿ではオルタナ編集部の判断で、「政治混乱」の言葉を使用しました。英語の原典は「US political revolution」です。

ユーラシアグループは、2026年の世界の10大リスクの筆頭に「米国の政治混乱」を挙げた
(c) Eurasia Group

ユーラシア・グループは、1998年に政治学者のイアン・ブレマーが設立した世界最大の政治リスク専門コンサルティング会社である。

毎年、年初に世界10大リスクを公表している。2026年最大のリスクである「米国の政治混乱」の概要は次の通りである。(以下、『ユーラシア・グループ 2026年世界10大リスク』から抜粋編集)。

  1. 米国は自ら、自らが作り上げた国際秩序を解体しつつある。世界最強の国が政治混乱の真っただ中にある。この新たな現実に適応することは、喫緊の地政学的課題となっている。
  2. ドナルド・トランプ大統領は、自らの権力に対する抑制を組織的に解体し、政府機構を掌握し、それを敵に対して武器化しようとしている。
  3. 政権はこのプロジェクトを民主主義への攻撃ではなく、その回復であると考えている。つまり、深く腐敗したエスタブリッシュメントに支配され、彼らに対して武器化されていた政府の「必要な浄化」であるという認識だ。
  4. 判断において民主主義が重要だと答えた2024年の有権者のうち、過半数がトランプを選んだ。それは彼を民主的価値の擁護者と見たからではなく、システムがすでに壊れていると考え、それを破壊してくれる人物を求めたからである。
  5. 「権力官庁」、特に司法省と連邦捜査局(FBI)はウォーターゲート事件以来彼らを保護してきた業務上の独立性を剝奪され、完全にホワイトハウスの政治的武器となった。メディア企業、法律事務所、大学は、服従を強いることを目的とした調査、訴訟、脅迫に直面することになった。
  6. 大手メディアやテック企業は、報復を受けるよりも、勝てるはずの訴訟でトランプ側に数百万ドルを支払って和解することを選んだ。経済界や金融界のリーダーたちは、不快感を抱きつつも、発言することによるリスクを嫌い、沈黙を守った。
  7. エリソン家はパラマウントの買収によりCBSの支配権を得た。同家はTikTok の米国事業に関する契約を結び、現在はCNNを傘下に持つワーナー・ブラザース・ディスカバリーを狙っている。イーロン・マスクのX、ルパート・マードックのFOX、そしてトランプ自身のトゥルース・ソーシャルと合わせれば、米国の旧来メディアとソーシャルメディアの多くがトランプ支持派の手中に収まることになる。
  8. トランプの取り組みは、最終的には成功するよりも失敗する可能性の方が高い。
  9. 政府全体で専門家が忠誠派に取って代わられるにつれ、国家の機能は弱まり、データを収集し、危機を未然に防ぎ、緊急事態に対応する政府の能力は低下する。
  10. 連邦緊急事態管理庁(FEMA)、疾病対策センター(CDC)、食品医薬品局(FDA)、国家安全保障会議(NSC)における大幅な予算削減は、災害対応、感染症流行の追跡、食品・医薬品の安全確保、国家安全保障の調整を行う政府の能力を低下させる。
  11. 2026年には米国自身が世界的リスクの根源となる。関税の脅しは、昨年ほど自由奔放ではないにせよ、貿易および非貿易上の譲歩を引き出すために引き続き利用されるだろう。
  12. トランプが政権に戻る前から、米国の政治システムは先進工業民主主義国の中で最も構造的に機能不全に陥っていた。彼はその機能不全の症状であり、受益者であり、加速装置であるが、原因ではない。そして、彼がそれを修復することもない。トランプの取り組みが成功しようが失敗しようが、以前の状態に戻ることはない。

ユーラシア・グループ2026年世界10大リスクは次のとおり。

  • リスクNo.1 米国の政治混乱
  • リスクNo.2 「電気国家」中国
  • リスクNo.3 ドンロー主義(トランプ版モンロー主義)
  • リスクNo.4 包囲される欧州
  • リスクNo.5 ロシアの第二の戦線
  • リスクNo.6 米国式国家資本主義
  • リスクNo.7 中国のデフレ
  • リスクNo.8 ユーザーを食い尽くすAI
  • リスクNo.9 米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)のゾンビ化
  • リスクNo.10 水の武器化

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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