億万長者400人がダボス会議で「私たちにもっと課税を」と書簡

記事のポイント


  1. ダボス会議に集まる世界の指導者らに向けて、約400人の億万長者が書簡を出した
  2. その内容は、「私たち富裕層にもっと課税を」という内容だ
  3. 超富裕層が政治的影響力を持つことでの格差拡大への懸念を表明している

約400人の億万長者が1月21日、ダボス会議に集まる世界の指導者らに宛てて、「私たち富裕層にもっと課税をして」と訴える公開書簡を出した。署名には、俳優兼映画監督のマーク・ラファロ氏、音楽家のブライアン・イーノ氏、映画プロデューサーのアビゲイル・ディズニー氏らが名を連ねる。署名者らは、極端な富が政治を汚染し、社会的排除を促進し、気候危機を助長していることを懸念している。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

約400人の億万長者らが、富裕層への課税を求めた

24カ国にまたがる約400人の億万長者が、世界の指導者に対し超富裕層への課税強化を要請する公開書簡を出した。この動きを中核的に推進しているのが、パトリオティック・ミリオネアーズと称する、富裕層らで構成するグループだ。

パトリオティック・ミリオネアーズは、2010年、公平な経済を推進する富裕層らが構成する形で発足した。当時のオバマ米大統領が、年収100万ドル超の富裕層に対するブッシュ減税を支持したことに抗議するために結束したのがそのきっかけだ。

同グループの議長を務めるのは、米資産運用会社ブラックロックで元マネージング・ディレクターを務めたモリス・パール氏だ。今では米国・英国など、地域ごとに分化したグループもある。

公開書簡は、「極度の富を持つ一握りの世界的な寡頭勢力が、私たちの民主主義を買い取り、政府を掌握し、メディアの自由を封じ、技術と革新を締め上げ、貧困と社会的排除を深刻化させ、地球の崩壊を加速させている」と指摘する。

そして、ダボス会議の参加者であれ、地方議員であれ、市長であれ、地域の指導者であれ、世界のすべての政治リーダーの義務は、極端な富がもたらす地球規模の存亡危機に取り組むことだとして、「私たち富裕層にもっと課税を」と訴える。

俳優兼映画監督のマーク・ラファロ氏は、「ダボス会議のリーダーたちが民主主義と法の支配に対する脅威を真剣に考えるのであれば、極端な富の集中と真剣に闘わなければならない」とコメントする。

「それは、私のような富裕層にも課税することを含む。寡頭政治ではなく民主主義を実現するためには、富める者に課税し、権力を国民に還元することが不可欠だ」(ラファロ氏)

■超富裕層による政治的影響力の「買収」に懸念

パトリオティック・ミリオネアーズが、G20 諸国に居住する資産(自宅以外)100万ドル以上の富裕層3900人に実施した調査では、「超富裕層が政治的影響力を買収している」と考える人は77%に上った。

この調査では、3分の2の回答者が、公共サービスへの投資のために超富裕層への増税を支持し、反対は17%だったという。

また約6割が、「トランプ大統領が世界経済の安定に悪影響を与えている」と答えた。なおこの調査は、トランプ大統領がグリーンランドの領有をめぐってEUへの課税をほのめかす前に実施したものだ。

トランプ大統領に関しては、第2次政権発足から1年を迎えた20日に、米ニューヨーク・タイムズ紙が、「1年前、ドナルド・トランプはアメリカ国民に奉仕することを誓ったが、実際は、大統領の地位を利用して私腹を肥やすことに専念している」と報じた。

同紙によると、トランプ大統領は大統領職を利用してこの1年で少なくとも14億ドル(約2200億円)の私的利益を得ており、それは米国の世帯収入の中央値の16822倍に相当するという。

■昨年、億万長者の資産は史上最高に

貧困撲滅を掲げる国際NGOのオックスファムは1月19日、2025年に億万長者の資産は過去5年間の平均成長率より3倍のペースで急拡大(前年比16%以上)し、18.3兆ドル(約2901兆円)に達したと発表した。

億万長者の資産は昨年1年間で2.5兆ドル(約396兆円)拡大したが、その増加した分だけで、世界人口の貧困層上位半分に相当する41億人が保有する資産合計にほぼ匹敵する。オックスファムは、この金額(増加分)は、極度の貧困を26回根絶するのに十分な額だと指摘する。

世界人口の4人に1人が十分な食事を得られず、世界人口のほぼ半数が貧困状態にある。その中で、億万長者(ビリオネア)の数は昨年、初めて3000人を超えた。最も裕福なイーロン・マスク氏の資産は初めて5000億ドル(約79.3兆円)を突破した。

オックスファムによると、億万長者は一般の人よりも政治職に就く可能性が4000倍高いという。66か国を対象に実施した世界の価値観調査では、回答者のほぼ半数が「自分の国では富裕層が選挙を買収することが多い」と答えた。

「富裕層と、その他大勢との間の格差の拡大は、きわめて危険で持続不可能な政治的な欠陥を生み出している」と、オックスファム・インターナショナルのアミタブ・ベハー事務局長はコメントする。

「経済的な貧困は飢えを生み出す。政治的な貧困は、怒りを生み出す」(ベハー事務局長)

■課税強化か誘致か、富裕層施策はさまざま

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北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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キーワード: #貧困

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