記事のポイント
- 商慣習として、コメは精米後1カ月強で売り場から撤去されることが多い
- 小売店に出荷している農家は、この商慣習で手間や人件費が増大していると嘆く
- 市場には低温管理や包装の工夫で1年賞味期限があるコメもあり、改善できるはずだ
コメは精米後1カ月強で売り場から撤去されることが多い。小売店に出荷している農家からは、この「1カ月強での売り場からの撤去」のために、精米回数や出荷回数が増え、手間や人件費がかさむという声も聞く。一方、低温管理やパッケージの工夫で、1年の賞味期限があるコメも市場には流通しており、この商慣習は見直すことができるはずだと考える。(オルタナ客員論説委員=井出留美)

あるスーパーで取材しているとき、精米して1カ月経ったら「廃棄する」と聞いて驚いた。
他のスーパーにも聞いてみたら、「廃棄する」と答えたスーパーがあった。そのほか「従業員に安く売る」「フードバンクに寄付する」「コメの納入業者に返品する(その後、外食産業にまわす)」などの回答を小売店からいただいた。
■精米後1カ月強で売り場から撤去する商慣習
精米は、JAS法と食品衛生法で「生鮮食品」として扱われるため、賞味期限の表示義務がない。そのため、スーパーなど多くの食品小売店では精米後1カ月強で売り場から撤去し、処分する商慣習がある。
筆者はこのことを、著書『私たちは何を捨てているのか 食品ロス、コロナ、気候変動』(ちくま新書)で指摘した。
以前は「精米年月日」まで表示していたので、精米後30日で売り場から撤去していたが、現在は「精米時期」として旬表示になっているので、スーパーによっては40日というところもある。
■「精米回数や出荷回数が増え、手間や人件費が増大」と農家の声
このことについて、3月8日に記事を書いたところ、小売店にも出荷しているというコメ農家の方から次のコメントをいただいた。
「小売店にも出荷している米農家です。この精米後1カ月で売り場から撤去は本当に改善してほしい。
冷蔵庫じゃなくて冷暗所に置いておくだけで、数カ月以上は普通に食べられるので、せめて2カ月ほどにしてほしい。この1カ月のために精米回数を小分けにしたり、出荷個数を少なくして回数を増やしたり手間や人件費が増大しています。
少しでも安く消費者に届けるためにも本当に改善してほしい」
「精米後1カ月強で売り場から撤去」のルールによって、農家が精米する回数や出荷する回数を増やさなければならない状況になっているという。
■研究者は「25℃保存で2カ月の賞味期限」
精米の賞味期限について研究した研究者は、保存温度25℃で2カ月の賞味期限があるとしている。
保存温度が20℃なら3カ月、15℃で5カ月、5℃で7カ月、おいしく食べられる。
スーパーの冷蔵ケースに精米を置くのは現実的ではないが、もう少し販売期間を延長することはできるのではないだろうか。
前述の農家の方が「せめて2カ月」と言っているように、2カ月に延ばすだけでも、コメ農家の方々の手間や人件費は減らせるのではないか。
■アイリスオーヤマのコメは「賞味期限1年間」
台湾では、市販のコメは真空パックで販売されているらしく、賞味期間は1年間に設定されていると、台湾在住の方から伺った。
日本の業界団体に取材したところ、真空パックは「コストがかさむ」「流通段階で破損が生じる可能性」で難しいとのこと。
アイリスオーヤマ(仙台市)は、15℃以下の低温管理で品質を保ちやすく、包装材として窒素入り高機密パックを使い、脱酸素剤を同封することで、精米後、賞味期間を1年間に設定している。
すべての流通米で、今すぐアイリスオーヤマと同じような方法をとるのは難しいと思うので、せめて食品小売店の「精米後1カ月強で売り場から撤去」のルールを見直してほしい。
※この記事は、執筆者が2026年3月9日に「Yahoo!ニュースエキスパート」に掲載した記事をオルタナ編集部にて一部編集したものです。執筆者による過去の「Yahoo!ニュースエキスパート」記事はこちらから、執筆者のニュースレター「パル通信」はこちらからメールアドレスをご登録いただくことで無料でお読みいただけます。



