記事のポイント
- タラリコは米テキサス州予備選で不利を覆し、民主党の上院候補になった
- 元教師で神学生。「隣人を愛せよ」と分断を超える政治を訴える
- 民主党不毛のテキサスで同氏が勝てば、米政治に地殻変動が起こる可能性がある
ジェームズ・タラリコ現テキサス州下院議員は、同州の連邦上院選予備選において、不利な情勢を覆して民主党候補になった。元教師で神学生という異例のキャリアを持つ同氏は、「隣人を愛せよ」を合言葉に、分断を超える政治を訴えている。40年近く民主党が上院選に勝っていないテキサス州において、中間選挙の予備選投票数が2002年以来最多を記録。世論調査でも共和党候補をリードするなど、勝機が見える。同氏が勝てば、米政治に地殻変動が起こる可能性が見えてくる。(在テキサス編集委員・宮島謙二)

ジェームズ・タラリコ現テキサス州下院議員
テキサス州議会のジェームズ・タラリコ下院議員は、3月3日の連邦上院選の民主党予備選で逆転勝利を収めた。世論調査でリードしていたジャスミン・クロケット連邦下院議員を得票率53%対46%で退けた。
現在36歳のタラリコ氏は、元中学教師で長老派教会の神学生でもある。「隣人を愛せよ」というキリスト教の教えを軸に、融和と希望の政治を訴えた。Z世代やミレニアル世代を中心に支持を広げ、全米から注目を集めている。
テキサス州で民主党が連邦上院選に勝ったのは1988年が最後だ。だが、共和党内の分裂とトランプ大統領への逆風が重なり、30年ぶりの歴史的勝利に現実味が出ている。
■深夜番組での騒動が転機に
タラリコは2025年9月に出馬を表明した。対するクロケットは12月に参戦し、知名度で先行した。テキサス大学の2月の調査では56%対44%でクロケットがリードしていた。
転機は2月16日に訪れた。CBSの深夜番組「ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーブン・コルベア」のテレビでの放送が直前に中止となった。FCC(米連邦通信委員会)の「均等時間ルール」を理由に、ネットワーク側が放送を見送った。
司会のスティーブン・コルベアはCBSの判断を激しく批判した。コルベアがYouTubeに公開したインタビュー動画の再生数は920万回を記録した。動画公開後、タラリコ陣営には24時間で250万ドル(約4億円)の献金が集まった。期日前投票の開始時期と重なり、形勢は一気に逆転した。
■教師から神学生、異色の経歴
タラリコはテキサス州ラウンドロック生まれだ。8世代にわたりテキサスで暮らす家系に育った。テキサス大学オースティン校で政治学の学士号を取得した。その後、同州サンアントニオで中学校の英語教師を務めた。ハーバード大学で教育政策の修士号を、オースティン長老派神学校で神学の修士号も取得した。
2018年に28歳でテキサス州議会下院に初当選した。選挙運動中に1型糖尿病の診断を受けた自身の経験から、インスリン価格の月額上限を25ドル(約4000円)に定める法案の成立や教育改革に取り組んだ。
シボレーのピックアップトラックを運転し、カウボーイブーツを履く。進歩的な政策を掲げながら、テキサスの文化に根ざした人物像は、共和党支持層にも親しみやすいはずだ。
■「左右」ではなく「上下」の闘い
タラリコの選挙戦でのメッセージは明快だ。
集会では「この国の本当の対立は左対右ではない。上対下だ」と繰り返し訴えた。億万長者や大企業の献金が政治をゆがめていると批判した。
キャンペーンの合言葉は、聖書由来の「テーブルをひっくり返す時が来た」だ。
選挙集会では、白黒の「Love thy Neighbor(隣人を愛せよ)」のサインが並んだ。聖書を引用しながら、LGBTQ+の権利や公教育の充実を主張する。保守派のキリスト教ナショナリズムとは対照的なスタイルだ。
保守派に人気があるテレビ司会者ジョー・ローガンのポッドキャストにも出演し、保守層との対話を試みた。対立候補を攻撃するのではなく、共感を軸にした前向きなメッセージがZ世代やミレニアル世代の心をつかんだ。
ある支持者は米メディアの取材にこう答えた。「政治家は対立よりも価値観を語るべきだ」。タラリコはそれを体現している。
■世論調査では、タラリコが共和党候補を僅差でリード
■テキサスでの民主党勝利に必要な条件はそろった
■タラリコが勝てば、米政治に地殻変動が起きる

