記事のポイント
- 乱気流に起因する、航空機内の負傷事故が増えている
- 科学者らは、乱気流の増加の背景に、気候変動の影響があると指摘する
- 2023年に最も揺れた飛行ルートの上位には成田や仙台発着便も入る
乱気流による揺れが原因で、航空機内の負傷事故が増えている。科学者らは、乱気流の増加の要因には、気候変動の影響があると指摘する。世界に約15万ある飛行ルートで発生した乱気流のデータ分析によると、2023年に最も揺れた飛行ルートの上位には、成田や仙台発着便も入っている。(オルタナ副編集長・北村佳代子)
5月21日にロンドン発シンガポール行きのシンガポール航空321便が、ベンガル湾上空で激しい乱気流に巻き込まれ、73歳の乗客1人が死亡、104人が負傷した。5月27日には、ドーハ発ダブリン行きのカタール航空機が、トルコ上空で乱気流に見舞われ、乗客乗員12名が負傷した。
シンガポール航空321便のような、乱気流による死亡事故は極めて稀だ。しかし、負傷者を出した航空事故の要因として、乱気流は珍しくない。
米・国家運輸安全委員会(NTSB)の2021年調査では、2009年から2018年の10年間で、負傷者を伴う航空事故の3分の1以上が乱気流による揺れに起因するものだった。なお、乱気流による飛行機への損傷は確認されなかった。
米連邦航空局(FAA)の統計によると、2009年から2022年の間で、乱気流によって2日以上の入院治療が必要となった重傷者の数は163人に上った。その大半が、シートベルトを外して業務にあたる客室乗務員だ。
■科学者が指摘する気候変動の影響