記事のポイント
- 世界気象機関(WMO)が年次報告書「地球の気候の現状2023」を発表した
- 気温のほか、海水温、氷河や南極の海氷の減少などでも記録を更新した
- WMO事務局長は現状を「レッドアラート(非常事態)」と警鐘を鳴らす
世界気象機関(WMO)は3月19日、年次報告書「地球の気候の現状2023」を発表した。2023年の平均気温は、産業革命前の水準を1.45℃上回り、174年の観測史上、過去最高を記録した。海洋の温暖化、氷河の後退、南極の海氷減少なども、これまでの記録を更新し、WMO事務局長は「レッドアラート(非常事態)」と警鐘を鳴らした。(オルタナ副編集長・北村佳代子)
WMOの報告書によると、2023年は史上最も温暖な年であり、世界の平均地表温度は産業革命前の基準値を1.45℃(不確実性マージンは±0.12℃)、上回った。この10年間は記録的な暖かさとなった。
また2023年は、温室効果ガスの濃度、地表温度、海洋熱、海面上昇、南極の海氷面積の減少、氷河の後退についての記録も更新した。
WMOのセレステ・サウロ事務局長は、「WMOは世界に向けて、レッドアラート(非常警報)を鳴らす。2023年に目撃された事象の中でも、前例のないほどの海洋の温暖化、氷河の後退、南極の海氷の減少は、特に懸念すべき要素だ」とコメントした。
アルゼンチン出身の気象学者で、2024年1月にWMO事務局長に就任したサウロ事務局長は、海洋の温暖化については「ほとんど不可逆的」だと述べ、「元に戻るには数千年かかる可能性がある」との懸念を表明した。「このトレンドは実に憂慮すべきものだ。水は、大気よりも長く熱を保つという特性があるからだ」。
■海面の水位上昇速度は加速
2023年の海水温は過去65年間で最も高くなった。2023年には90%以上の海が熱波を経験した。
海洋熱は北大西洋に集中し、2023年後半には平均気温が3℃上昇した。海水温の上昇は、デリケートな海洋生態系に影響を及ぼし、多くの魚種が、より低い海水温を求めて北上している。
2月には南極の海氷面積(少なくとも15%の氷に覆われた総面積)が過去最低を記録した。前回の過去最低記録から100万平方キロメートル減少しており、その規模はエジプトの面積にほぼ等しい。
氷河もまた、北米と欧州での極端な融解を背景に、1950年以降で最大の減少幅を記録した。ヨーロッパのアルプスの氷河は極端な融解に見舞われ、スイスの氷河は、過去2年間で残りの体積の約10%を失ったという。
氷河や氷床の融解に加え、海水の膨張を引き起こす海洋熱の上昇が継続したことで、海面も、過去30年間で年平均3.34ミリメートル上昇した。
海面は、1993年から2002年までに、年間2.13ミリメートル上昇したが、2014年から2023年までの10年間で見ると、年間4.77ミリメートルの上昇と、上昇幅は2倍超となった。
■温室効果ガスの濃度は産業革命前から50%高い
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■2024年はさらに悪化する「可能性が高い」