記事のポイント
- 2024年の世界平均気温は、産業革命前から1.55℃上昇し、初めて暦年で1.5℃を超えた
- パリ協定の「1.5℃目標」は数十年で測定する長期目標のため、1年の実績で失敗とはみなさない
- しかし史上最も暑い上位10年は過去10年に集中しており、気候危機を前にさらなる行動が必要だ
2024年の世界平均気温は、産業革命前(1850年から1900年の平均)に比べて1.55℃(不確実性の幅は±0.13℃)高かった。世界気象機関(WMO)が1月10日(日本時間1月11日未明)に発表した。パリ協定で掲げる「1.5℃目標」は数十年にわたって測定する長期気温目標であるため、1年の実績だけをもってパリ協定の達成に失敗したとはみなさない。しかし、記録上最も暑い年の上位10年を、2015年から2024年の10年が占めており、気候危機への対策は急務だ。(オルタナ副編集長=北村佳代子)
国連のアントニオ・グテーレス事務局長は、WMOによる発表を「地球温暖化の冷徹な事実を改めて証明するものだ」と評した。
「1.5℃を超えた年があっても長期目標が達成できないということではない。しかし、その軌道に乗るには、さらに懸命に戦う必要がある。最悪の気候災害を回避する時間はまだある。しかしそのためには、リーダーたちは今すぐ行動しなければならない」(グテーレス事務局長)
WMOのセレステ・サウロ事務局長は、パリ協定の長期気温目標は1年ではなく数十年にわたって測定するものだとしながらも、「ほんのわずかな気温上昇も問題だと認識することが重要だ。気温上昇が1.5℃未満か超えているかにかかわらず、地球温暖化が一段階進むごとに、私たちの生活、経済、そして地球への影響が増大する」と述べた。
WMOは欧州中期予報センター(ECMWF)、日本の気象庁、米航空宇宙局(NASA)、米国海洋大気庁(NOAA)、イギリス気象庁など、6つの国際的なデータソースをもとに、統合的に世界の気温を算出した。
またWMOは、2024年には海洋の温暖化も記録的な高温となったとする別の研究にも言及した。7か国の31の研究所から54人の科学者らが参画したその研究によると、海洋は表面だけでなく水深2000メートル以上の深さでも、記録上、最も暖かくなっているという。
WMOは今年3月に、温室効果ガス、地表温度、海洋熱、海面上昇、氷河後退、海氷面積などの主要な気候変動指標について2024年の現状を詳述する報告書を発行する。