■「消費者にも知ってほしい」
ニッケルの世界的な需要増のなか、鉱山が立地する近くの環境保護指定地域であるブランジャオ山に新たな鉱区を開発する計画が、現在進められているという。
フィリピン・パラワン島で30年にわたりニッケル鉱山の開発問題に取り組んできたNGO、環境法律支援センターのグリゼルダ・マヨアンダ弁護士は、「パラワン島はフィリピン特有種の4割が生息し、生物多様性保全のカギとなる重要な地域」と指摘し、鉱山開発の拡張に警鐘を鳴らす。
マヨアンダ弁護士は、森林生態系の保護や地域コミュニティのニーズ、文化的価値などを含めた当該地域の総経済価値は、鉱山開発による便益を大きく上回るとの研究を紹介したうえで、「鉱山開発を規制する法整備が必要」と指摘する。
ビジネスと人権の問題に詳しい土井陽子・エシカルケータイキャンペーン実行委員は、脱化石燃料に向けたニッケル需要の増加などエネルギー転換について、「地域や生態系にさらなる負荷がかかることのない公正な移行が求められる」と話す。
そのために、企業の事業活動がもたらす人権への影響を2次サプライヤーも含めて特定し、それを防止・軽減していく「人権デューデリジェンス」の必要性を強調。以下のように指摘した。
「鉱物に関する人権方針を持つ企業が実際にそれを実践しているかチェックし、そうした環境・社会面の評価を投融資に反映するESG投資の仕組みづくりが求められる。また例えば電気自動車のバッテリーなど、様々な形で私たちの日常生活とつながっている製品に関して、消費者の立場から問題を知り、企業に意見を伝えるなど行動していくことが大事だ」
マヨアンダ弁護士はこの指摘に応え、「生物多様性や地域社会にとって重要な森林(を伐採した採掘地)から、鉱物が調達されていることを知ってほしい」と強調した。