
国内における温暖化ガスの排出削減を目的に、政府が取り組んできた2つのクレジット制度が2013年度に統合される。中小企業等の低炭素投資を促す目的で経済産業省が主導する「国内クレジット制度」と、カーボン・オフセットを目的に森林吸収プロジェクト等で強みを持つ環境省主導の「J-VER制度」だ。統合により国内の排出量取引の活性化が期待される一方、新制度が京都議定書以降の温暖化対策の中でどれだけ排出削減に貢献できるのかは未知数だ。
■省庁縦割りを解消
14日に経産省で開かれた新クレジット制度に関する検討会では、両制度の統合に向けて検討を進めることが確認された。次回の検討会で運営体制や排出削減認証など、具体的な制度設計の方向性をまとめる見通しだ。
08年にスタートした国内クレジットとJ-VERの両制度は、目的が似た制度が並立している状況により、企業や自治体などの利用者から「どちらを利用すべきか分かりにくい」などの要望が寄せられていた。また排出削減事業の策定や登録、認証に時間や手間がかかるなど、使いづらい問題も表面化していた。
新クレジット制度では、省庁の縦割りに基づく制度の並立を解消し、クレジット手続きの簡素化を図ることを通じて国内での排出権取引の活性化が期待されている。
■実効性は未知数
今回の統合の背景には、12年で期限が切れる京都議定書の延長に反対してきた日本が13年以降、新たな温暖化対策の枠組みが発効する20年までは独自に温暖化対策を進める必要に迫られている、という事情がある。
ところが、12年までは1990年比でマイナス6%の削減義務を課されていた日本が13年以降の削減義務を拒否している現状で、新クレジット制度が具体的にどこまで日本の温暖化ガス排出削減に貢献できるかは未知数だ。
地球温暖化問題に取り組むNPO「環境・持続社会」研究センター(JACSES)の足立治郎事務局長は「今回の統合を機会に、新制度が世界の動きとの関係でどのような役割を果たすべきか、議論が深まればいい」と話している。(オルタナ編集部=斉藤円華)2012年5月15日