オムロンは「企業理念経営」をどう進めてきたのか

記事のポイント


  1. オムロンは企業理念を実践に落とし込む「企業理念経営」を進めている
  2. 「より良い社会をつくる」という社憲が、サステナの取り組みにつながっているという
  3. 理念を「実践する」ための取り組みとして、グローバル表彰制度などを展開する

オルタナは7月16日、サステナ経営塾21期第4回を開いた。第4講には、オムロンの貝崎勝・データソリューション事業本部カーボンニュートラルソリューション事業部 シニアアドバイザーが登壇し、「オムロンの長期ビジョン『SF2030』とカーボンニュートラルソリューション事業」について講義した。講義レポートの全文は下記の通り。

「企業は社会に貢献してこそ存在する意義がある」

私は現在、オムロンのデータソリューション事業本部 カーボンニュートラルソリューション事業部に所属しています。本日は、3つのテーマについてお話ししたいと思います。

1つ目は、オムロンの概要と「企業理念経営」についてです。2つ目は、2022年にスタートしたオムロンの長期ビジョン「SF2030」のご紹介です。最後に、私が取り組んでいるカーボンニュートラルソリューション事業についてもご紹介したいと思います。

オムロンの創業は1933年で、2025年で92年目を迎えます。本社は京都にあり、社名の「オムロン」は、京都の「御室(おむろ)」という地名に由来しています。

現在、社員数は約2万6000人で、主な事業は5つに分かれています。1つ目は「制御機器事業」で、これはいわゆるファクトリーオートメーションの分野です。工場の生産設備などに使われる技術で、オムロンの事業の中では最大の比率を占めています。

2つ目は「ヘルスケア事業」、3つ目が「社会システム事業」です。社会システムでは、駅で見かける券売機や自動改札機、最近では太陽光発電関連の設備も手がけています。4つ目が「電子部品事業」で、これは家電などに使われる電子部品の分野。5つ目が、私が今いる「データソリューション事業」です。ここでは、さまざまなデータを活用し、新しい価値を創出する取り組みを行っています。

オムロンの社員の約6割、売り上げの約6割が海外にあります。南米や中東・アフリカの一部地域を除いて、かなり広範囲にわたってグローバルに展開しています。

さてオムロンは「社憲」を非常に重視しています。

「われわれの働きで、われわれの生活を向上し、よりよい社会をつくりましょう」

この社憲は1959年に創業者・立石一真が制定したもので、「企業は利益を追求するだけでなく、社会に貢献してこそ存在する意義がある」という信念を社員にも分かりやすく伝えるために作られました。

この社憲には、「事業を通じて社会の発展に貢献する」という社会的使命と、「自らが社会を変える先駆けになる」という意志が込められています。私はこの考え方を軸に、サステナビリティを経営にどう組み込んでいくかを、長年にわたって模索してきました。

この「より良い社会をつくりましょう」という社憲の考え方こそが、昨今のサステナビリティの取り組みにつながっていると思っています。そして、この社憲を土台として、オムロンでは企業理念を定めています。

企業理念は過去に何度か改訂されていますが、現在のものは2015年に改訂されたバージョンです。2022年には、この企業理念が会社の定款にも組み込まれました。それだけ、企業活動の核となるものとして重視されています。

企業理念は「Our Mission」と「Our Values」の2本柱で構成されています。

「Our Mission」には、先ほど紹介した社憲がそのまま記されています。そして「Our Values」では、私たちが大切にしている価値観として、「ソーシャルニーズの創造」「絶えざるチャレンジ」「人間性の尊重」の3つを掲げ、私たちの行動の指針としています。

この企業理念が、オムロンにとってどういう意味を持っているのか。企業理念や社是は多くの会社にあると思いますが、オムロンではこの企業理念を、私たち一人ひとりの判断や行動の寄りどころとして、また会社の求心力や発展の原動力として位置付けています。

(この続きは)
グローバル表彰制度で理念を「実践する」
■社会の課題は、社会的価値を生み出す機会に
長期ビジョンであえて売り上げ目標は設定しない
製造業のCO2削減を支援する

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yoshida

吉田 広子(オルタナ輪番編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。2025年4月から現職。執筆記事一覧

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キーワード: #サステナビリティ

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