「ネットゼロ掲げて化石燃料拡大はウォッシュ」と海外投資家

記事のポイント


  1. カナダで投資家グループが化石燃料企業にグリーンウォッシュの申し立てを行った
  2. 「ネットゼロ目標を表明しながら、化石燃料の供給を拡大している」のがその理由だ
  3. ネットゼロ目標の達成のために十分な資本支出を割り当てていない点も問題視した

カナダを拠点とする投資家グループは今年8月、同国アルバータ州証券委員会に対し、カナダのエネルギー企業2社が組織的なグリーンウォッシュを行っているとの申し立てを行った。排出量実質ゼロのコミットメントを表明しながら、実際には、化石燃料の供給を促進していることを問題視し、環境に関する情報開示が、過度に宣伝的だと非難した。ネットゼロ排出に向けた資本配分も不十分だと指摘した。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

ネットゼロ目標を掲げ化石燃料事業を大幅に拡大する企業は「根本的な矛盾」だとして投資家が「ウォッシュ」告発

申し立てを行ったのは、パリ協定遵守を求める投資家連合(I4PC:インベスターズ・フォー・パリス・コンプライアンス)だ。

組織的なグリーンウォッシュを行っていると非難されたのは、カナダの石油大手セノバス・エナジー社と大手エネルギーインフラ企業のエンブリッジ社だ。セノバス・エナジー社は、カナダとアジア太平洋地域で石油・天然ガスの生産事業を展開する。エンブリッジ社は北米で石油・ガスパイプラインを運営する。

両社とも、2050年までの排出量のネットゼロ達成を目標に掲げる。

しかしI4PCは、「排出量ネットゼロに向けた取り組みを誇張しており、誤解を招く開示内容はグリーンウォッシュだ」として2社を非難した。

「両社ともに排出量ゼロへのコミットメントを主張しながら、化石燃料の供給拡大を促進している。資本支出のごく一部しか、ネットゼロ達成に充当していない」とI4PCは指摘し、環境関連の開示も、「過剰に宣伝的」だと断じた。

■カナダはグリーンウォッシュを禁じる

カナダでは2024年6月に、競争法の改正の一環として、誤解を招くグリーンウォッシュの主張を禁止する法律が成立した。

この法律が成立した直後には、カナダ最大の化石燃料生産者連合のパスウェイ・アライアンスが、自社のウェブサイトやソーシャルメディアから環境関連のコンテンツをすべて削除するなどの動きも見られた。

カナダではほかに、ヨガウェアブランドを展開するルルレモンや、ロイヤル・バンク・オブ・カナダも、過去にグリーンウォッシュで告発されている。

■広報や資本配分も「組織的ウォッシュ」との告発要因に

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北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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キーワード: #脱炭素

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