記事のポイント
- 気候変動によって世界の7割のカカオ豆の生産地で収穫量が落ち込む
- 米国の研究者たちが最新の調査報告書をこのほど公開した
- 違法な金採掘の横行などで、カカオの木を枯らす病気も急速に広がる
気候変動によって世界の7割のカカオ豆の生産地で収穫量が大幅に落ち込んでいる。米国の研究者たちが最新の調査報告書をこのほど公開した。生産地では違法な金採掘が横行し、シアン化物や水銀などの有害化学物質が大量に排出される。その結果、農園が汚染され、カカオの木を枯らす病気が急速に広がり、人権侵害も横行する。(オルタナ副編集長=池田 真隆、北村 佳代子)
気候科学を分析する米クライメート・セントラルは2月12日、気候変動が「カカオベルト」と呼ばれる西アフリカの主要なカカオ豆生産地に与える影響について調べた最新レポートを公表した。
カカオベルトとは、ガーナ、コートジボワール、カメルーン、ナイジェリアの西アフリカ諸国を指す言葉だ。これら4カ国で世界の7割のカカオ豆を生産する。
■カカオの生育に適さない猛暑日、1カ月超続く
同レポートでは、世界のカカオ豆の半数以上を生産するガーナとコートジボワールでは、生育最適気温の上限である「32℃」を超えた日が、気候変動の影響がなかった場合と比べて年間3週間以上増えたことを明らかにした。過去10年間(2015年~2024年)、10月から3月までの主収穫期を対象に調べた。
史上最も暑い年となった2024年の単年で見ると、その結果はさらに深刻なことが明らかになった。西アフリカのカカオ豆生産地の約7割で、32℃を超えた日が、気候変動の影響がなかった場合に比べて年間6週間以上増えたという。
カカオ豆の生育には、降雨量の変化や、虫を媒介とした感染症なども影響するが、32℃を超えると収穫量・質ともに低下する。
ガーナとコートジボワールだけでカカオ豆産業には900万人以上が従事する。気候変動が、生産者の生活や地域経済、さらには世界のチョコレート価格に少なからぬ影響を与えていることをデータで示した。
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