記事のポイント
- 国際エネルギー機関(IEA)は、最新報告書「世界エネルギー展望2025」を公開した
- 低価格の再エネの供給が急増することで、化石燃料時代は終焉を迎えることを再確認した
- 石油・石炭の需要は、2030年までにピークに達するとの見方を示す
国際エネルギー機関(IEA)は11月12日、最新報告書「世界エネルギー展望2025」を公開した。報告書は、低価格の再生可能エネルギーの供給が世界で急増しており、化石燃料時代は終焉を迎えることを示した。トランプ政権による化石燃料の推進施策にもかかわらず、世界全体の石油・石炭の需要は2030年までにピークに達するとの見方を示した。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

再エネ拡大は今後も加速し、
石油・石炭の需要は2030年までにピークに達する
国際エネルギー機関(IEA)は11月12日、最新版の報告書「世界エネルギー展望2025」を公開した。
報告書は、今後10年間で再エネは主要エネルギー源の中で最も急速に成長することを再確認した。米トランプ政権は化石燃料を推進するが、世界全体のエネルギーが化石燃料から再エネへと移行する動きは「不可避」だと結論づけた。
環境NGOのオイル・チェンジ・インターナショナルのデビッド・トン氏は、IEAの報告書を「エネルギー転換を単独の国が阻止することは不可能であることを確認したもの」だと英ガーディアン紙にコメントした。
同紙はまた、「再エネと電化が未来を支配する。すべての化石燃料輸入国は、これを受け入れることで、最大の利益を得られるだろう」という、英・気候シンクタンク・エンバーのチーフアナリストのコメントも紹介した。これは日本にも当てはまる。
■トランプ政権の圧力がシナリオに影響する
IEAが報告書で用いるシナリオに関しては、米共和党ならびに米トランプ政権が、1年以上にわたって、化石燃料業界にとってよりポジティブな未来像を示すよう、圧力をかけてきた。その影響もあり、IEAは、エネルギー展望を2つのシナリオに基づいて示した。
IEAがここ数年用いてきたシナリオは、現行政策だけでなく、開発中や発表済みの政策も考慮した「中心シナリオ(表明政策シナリオ:STEPS)」だ。しかし今回は、この「中心シナリオ」に加えて、すでに実施されている政策だけを考慮する「現行政策シナリオ(CPS)」も5年ぶりに復活させた。
「現行政策シナリオ」は、化石燃料への需要がより高く推計される傾向があるほか、新エネルギー技術の導入についても、「中心シナリオ」より慎重に見積もる。
■石油・石炭需要は頭打ち、再エネは力強く成長を続ける
IEAは、石油・石炭の需要が2030年までにピークに達するとの見方(中心シナリオ)を示した。
同時に、世界が現行政策から「方向転換」しなければ、2050年まで石油・石炭の需要は増える(現行政策シナリオ)ことも示した。
しかしどちらのシナリオにおいても、再エネは、他の主要エネルギー源よりも速いスピードで成長を続けていくことに変わりはない。今後5年間で世界が建設する再エネプロジェクトは、過去40年間に導入されたものを上回ると予想され、この再エネの増加が、世界の電力需要のほぼ全てを満たし得るとまとめた。
電気自動車(EV)、冷暖房、AI・データセンター関連での電力需要の増加を背景に、世界の電力需要は今後10年で4割増加する見込みだ。なかでも中国は、今後10年、世界の再エネ導入量の45~60%を占める最大市場であり続けると同時に、再エネ技術の最大製造国としての地位を維持していくと見通す。
太陽光パネルや電池の生産キャパシティの多くは中国しており、その豊富な生産能力が価格競争力にもつながっている。一方で、2024年には、太陽光PVモジュールは実際の導入量の2倍以上、電池セルは同様の約3倍の製造能力に達していることも指摘した。
中国企業は、EVを含めた中国の新エネルギー技術を使った製造設備を、インドネシア、モロッコ、ハンガリー、ブラジルなどの海外でも投資を進めている。特に発展途上国では、コスト競争力のある新エネルギー技術にアクセスできる大きな機会をもたらしているが、その一方で、この新たなバリューチェーンで中国が支配的なポジションを占めることについての懸念についても報告書は言及した。
■新規LNGプロジェクトの急増に疑問も
■データセンターやEVの見通しも示す
■エネルギー展望で確信を持って言える4つのこと
■エネルギー安全保障は、重要鉱物争いに
■気温上昇を「1.5℃以下」に抑える道筋も示す

