記事のポイント
- ヒューマン・ライツ・ウォッチが年次報告書「世界人権年鑑2026」を公表
- トランプ政権などが国際的な人権保護の仕組みを揺るがしていると指摘
- 日本については、国内人権機関が存在しない点を課題に挙げた
国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が2月4日、100カ国以上の人権状況を検証した年次報告書「世界人権年鑑2026」を公表した。トランプ政権の政策や中国・ロシアの動向が、国際的な人権保護の仕組みを揺るがしていると指摘した。日本については、国内人権機関が存在しない点を課題に挙げた。(オルタナ輪番編集長=吉田広子)

HRWの年次報告書は、トランプ米大統領による司法の独立性への圧力や対外援助の削減、多国間協定からの離脱が人権保護の仕組みに与える影響を指摘した。さらに、中国・ロシアの動きも踏まえ、国際的な人権保護メカニズムが危機に直面していると警告する。
HRWは、民主主義国が市民社会や国際機関と連携し、貿易や安全保障の枠組みに人権規範を条件として組み込む必要があると提言した。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのフィリップ・ボロピオン代表は、「世界の人権システムは危機に瀕している。米大統領は、白人至上主義イデオロギーに沿った政策とレトリックを採用している」と指摘した。
「米政権は、司法の独立性を攻撃し、裁判所の命令に従わず、食糧援助やヘルスケアへの補助金を削減した。女性の権利を後退させ、中絶ケアへのアクセスを妨害し、人種差別の被害に対する救済策を損なった。トランスジェンダーやインターセックスの人々から保護を剥奪し、プライバシーを侵害した。さらに政府の権力を利用し、政敵やメディア、法律事務所、大学、市民社会、さらにはコメディアンまでも脅している」(ボロピオン代表)
■日本は婚姻の平等や子どもの権利で前進
HRWは日本について、人種・民族・宗教、性的指向・性自認、年齢に基づく差別を包括的に禁止する法律が存在しないことに加え、国内人権機関が設置されていない点を課題として挙げた。
外務省が1月、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)に対し、日本の国連任意拠出金のうち、国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)への配分を行わないよう伝達したことにも言及した。この対応は、同委員会が2024年、皇位継承者を男性に限ると定めた皇室典範の改正を日本政府に勧告したことを受けたものだとしている。
一方、婚姻の平等を求める動きには一定の進展が見られたとした。日本各地で提訴された同性婚訴訟について高裁判決が出そろい、6件のうち5件で違憲との判断が示された。2026年中にも最高裁の判断が示される見通しだ。
子どもの権利をめぐる分野でも、2025年に改革が進んだ。3月には、公立高校の授業料相当額を所得制限なしで無償化することが国会で決定された。
その一方で、生活保護については、制度に対する偏見や利用しにくい仕組みが残り、実際の受給者は本来対象となるべき人の約2割にとどまっていると指摘した。



