サッカーW杯・南ア大会の余韻が冷めやらぬなか、各代表チームは次期「2014年ブラジル大会」に向け、新体制を整え始めた。近年のワールドカップ決勝トーナメントの顔ぶれを見るにつけ、「サッカーが強い国は環境政策も進んでいる」との仮説が浮かび上がってきた。小誌オルタナは20カ国以上の海外取材網を駆使して、これを検証する。第1回目は、W杯優勝5回の最強国、ブラジルだ。
「世界一」のエコスタジアム
サンパウロ市から南西に340キロメートル。パラナ州クリチバ市は人口170万人と州最大の都市であり、三浦知良氏もブラジル修行時代を過ごしたことで知られる。
ここに2007年、ブラジル初のエコ・サッカースタジアム、「ジャンギット・マウセリ・スタジアム」が誕生した。その環境仕様は「世界一」かも知れない。
観客席に芝生を敷き詰め、廃棄されていた枕木も利用。コンクリートを一切使用していない。

(ジャンギット・マウセリ・スタジアム=クリチバ市で、高橋直子撮影)
「エコスタジアムは、建設費を抑えるという目的だけでなく、積極的に自然保護に関わっていこうという意識から生まれました。ビジュアル的にエコを強調したことで選手、観客に分かりやすく自然保護を訴えています」と地元SCのジョエル・マウセリ会長は自慢げに話す。
クリチバ市は、市民一人当たりの緑地面積が55平方メートルと広く、環境都市として知られている。国連で表彰されたこともあり、羊が芝を刈る公園、ゴミと野菜の交換システムなどが広く知られている。
今年は100%バイオマスで走る公共バスが誕生した。ブラジル初の取り組みで、現在試験運転中だ。また、リサイクル可能なゴミを、その重さによって野菜や果物と交換するシステムも、市民の環境を高めている。これをまねて、リサイクルゴミと電気料金を交換するシステムが他州に誕生した。