なぜNPOは「怪しい」? 信頼できない要因は何か

■NPO選びで間違えないためには(8)■

営利組織、非営利組織といった様々な形態の団体がある中で、日本では非営利組織(以下、NPO法人を含むNPO全般)を「怪しい」と感じてしまう方は多いのではないだろうか。なぜ日本ではNPOが怪しいと思われてしまうのか。(非営利組織評価センター=浦邉智紀)

日本のNPOは信頼度が低い

世界最大のPR会社エデルマンは、日本をはじめ世界約30カ国で、「企業」「NPO・NGO」「行政」「メディア」に対する信頼度調査「トラストバロメーター」を約20年に渡って実施している。このトラストバロメーターでは、日本と諸外国で、信頼度はどのくらい違うのかスコアを算出したデータを見ることができる。

NGO・NPOに対しての信頼度スコア(2021年)は、グローバル平均値が58となっている。最もNGO・NPOに対しての信頼度が高い国は、インドの78だ。日本は39と諸外国と比べて低い数値にあるが、それでもメディアのスコア(36)よりもNGO・NPOに対する信頼度は高い。

一般的に「信頼」とは、その人物の人柄に左右されることが多い。例えば、友人が運営しているAというNPOと、つながりのないBというNPOでは、Aの方が信頼して寄付をする。そして活動にも参加しやすいのではないだろうか。私たちは主観的にその人物に期待を抱いている。

日本ではNPOの存在がそもそも認知されていないが故に信頼度が低くなる傾向もあるのではないか。実際、私たちは1週間の間にNPOと関わることはどのくらいあるだろうか。例えば、NPOが運営するどこかの施設を利用する頻度はそんなに多くはないだろう。

また、日本ではNPOの信頼を示す指標などが定義化されておらず、どのようにNPOの信頼を調べるのか分からないというのが現在の状況である。

1つの不祥事が他の多くの団体のイメージに影響するNPO

「〇〇協会で横領があった」「〇〇センターでハラスメントがあった」というニュースを目にする。この1回起きたNPOの不祥事が、他の多くのNPOのイメージにも影響してしまっている。企業や行政でも横領や不正といったニュースはよく目にするが、なぜNPOだけが悪いイメージの循環に陥ってしまうのだろうか。

この原因として考えられるのは、メディアで報道される際に不祥事を起した個別団体名での報道ではなく、「NPO法人」と一括りにされて報道されてきたことも要因の1つであろう。その他、外的要因としてNPOに関わる法律や社会経済の変化、内的要因としてブランドマネジメント、リスク管理など多様な要素から発生する。

今回は外的要因となるNPOの法律に焦点を当てて見ていく。

NPOは「特定非営利活動促進法(以下、NPO法)」という法律がある。この法律は、ボランティア活動をはじめとする市民の自由な社会貢献活動を促進することを目的としている。NPO法は、自主的な法人運営が尊重され、情報開示を通じた市民からの監視を前提とした制度となっている。

自主的な運営が重視される一方、NPOは情報開示が最低限になってしまっている状況が存在する。NPOの資金がどのように利用されているのか分からない、団体のウェブサイトから活動実績が分からないということになってしまう。

NPO側は、NPO法を理解する人材の育成及びその人材育成をする支援団体の成長が求められている。一方、市民側は、NPOは自主的な法人運営が尊重されていることを念頭に置き、市民からの監視機能を働きかける必要がある。

NPOが市民の身近な存在として、多様化する社会のニーズに応えていくことがますます期待されている。NPOは事務所がある地域、団体の代表が近くにいる地域に根付き活動を行うことが多い。また行政ではカバーしきれない活動を行っている団体が珍しくない。まずは身近なNPOはどんな活動を行っているのか知ることから始めてみてはどうだろうか。

NPOを知ることから始めよう

今では多くの情報を目にすることができる時代であるが、コロナ・パンデミックにより、一層この情報過多な状況となり、情報の精度が求められるようになった。

NPOは、自団体のウェブサイトやSNSを利用して情報発信を行うことが当たり前となってきたが、戦略的に情報発信をすることが求められている。

どんな人にどんな情報を届けるのか。そして、結果的にどんなアクションを起こして欲しいのかを考え、1回1回の情報発信を行う必要がでてきた。

一方、情報の受け手側は、先入観や今までの固定概念にとらわれず、自らNPOの活動に関わり、目に見た、肌で感じた、耳で聞いた情報を得てほしいと思う。

NPOと市民の信頼構築は一朝一夕では成り立たない。まずはお互いがNPOを知り、NPOを考えていくことから始まれば嬉しい。

JCNEは、「NPOの信頼」を考えるトラスト&イノベーションシンポジウムを2022年1月21日にオンラインで開催する。NPO、企業、中間支援組織などのそれぞれの目線からNPOの信頼を考えていく。

トラスト&イノベーションシンポジウム
「信頼が企業とNPOの協働を生み出す」

開催日時:2022年1月21日(金)14:00~16:00(開場13:50)
開催方法:オンライン(Zoomのウェビナーを予定)
対象者 :NPO支援に興味のある企業、NPO、中間支援組織、
     自治体等の関係者、NPOの信頼に興味関心のある方々
定  員:100名
参 加 費 :無料
主  催:(一財)非営利組織評価センター
助  成:(公財)日本財団
お申込み:https://jcne20220121.peatix.com/

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公益財団法人 日本非営利組織評価センター

日本非営利組織評価センターは、NPOの組織評価を行う日本で初めての第三者審査機関です。  グッドガバナンス認証マークはNPOの「信頼の証」。財務が健全である、労務管理は法律に準拠している、不正を防止する仕組みがあるなどの視点に基づく審査を行っています。SDGs達成に向けた協働先、社員のボランティア参加先にもおすすめです。

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キーワード: #NGO#NPO

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