大地の気と人の想いを縒り合わす――八木マリヨの「縄ロジイ」環境芸術展

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精神の力強さ。八木マリヨの作品にはこれがある。心と言い換えてもいい。それは昨今のパブリックアート、ソーシャルアートが見失いがちなものだ。多くが野外で発表される彼女の環境芸術だが、銀座で開催中の個展ではそのエッセンスを体感できる。

会場は、麻や紙、ベンガラ顔料、土から作り出された作品で埋め尽くされている。そこには懐かしさを感じさせる風合いがある。しかし、程よい口当たりというわけではない。作品に共通する、ねじれ、螺旋的な造形フォルムは凄みを感じさせる。

彼女はこれを縄ロジイと呼ぶ。実際、縄をモチーフとした作品もある。縄文的な造形とも言えるが、彼女はこれがDNAや渦巻銀河などに見られる根源的な物質の構造だという。

縄は「なわ」と読むが、これは「汝(な)我(わ)」に通じ、対立ではなく、両者が「縒(よ)り合わさる」支え合いに根ざすと八木は言う。日の丸と星条旗を縒り合わせた旧作には友愛の意味も込められている。

八木が麻縄と出会ったのは1972年のこと。高度成長期が終わろうとし、日本は情報社会、つまり経済的な価値観にすべてが統合される管理社会に向かおうとしていた。世情を憂いていた彼女は、弱いもの同士で支え合う縄の構造にめざすべき文明のビジョンを見た。

1980年代に流行したパブリックアートは、作家の主観が強く打ち出されがちだった。逆に、現在のパブリックアートやソーシャルアートは都市計画/社会学的なリサーチに偏りがちな面もある。八木はそのどちらでもない。

地域の人との綿密な話し合いから生まれる協業。そして、場所性の読み込みで重視される精神性。彼女は「ゲニウス・ロキ(地霊)」と呼ぶが、古来よりこれは「気」とも呼ばれてきた。作家としてのエゴ、無味乾燥なリサーチ。双方を超越した普遍性こそ彼女のめざすものだ。

では、その解はどのような造形であらわされるだろうか。注連縄(しめなわ)の断片のようなオブジェ「宙の棲みか1」「同2」。縒り合わさった縄が直立する「NAWA AXSIS – Nishijin」。これらは神道の信仰文化を連想させるが、その土地の共通項=共通の絆として機能する。この普遍性があるからこそ、彼女特有の粗っぽい造形に託した想い、主張も生きてくる。いまパブリックな場所には、想いの持つこの強い力こそ必要ではないか。(文中敬称略)(文・写真=美術・文化社会批評 アライ=ヒロユキ)

「NAWA AXSIS - Nishijin」2011年

「地球惑星の臍」2012年

3階メイン会場の展示風景

作者の八木マリヨさん

「許された期間の終わりまで」1994年。こちらは1階のポーラ ザ ビューティ 銀座店で展示

 

 

八木マリヨ「The Planet Earth&earth – 地球惑星にすれば・・・」
2012年11月3日(土)~12月9日(日)
会期中無休 入場無料
11:00~20:00(入場は閉館の30分前まで)
ポーラ ミュージアム アネックス
〒104-0061 東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル 3階 TEL.03-3563-5501
http://www.pola.co.jp/m-annex/exhibition/

2012年11月19日(月)13:35

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