では、どんな対策が有効なのだろうか。筆者は、社員一人ひとりが「プライド」を持つこと以外に無いと考える。
2年ほど前の「オルタナ」とのインタビューで、損害保険ジャパンの佐藤正敏会長(当時)は「CSRを徹底することで、社員たちがコモンセンス(常識)を発揮できる。一人ひとりが誇りを持つようになる」と明言していた。
きちんと社会的責任を果たす、CSR活動に積極的に取り組むメリットは、社会からの良い評判(それが顧客創造につながる)を得るだけではなく、社員のプライドを高める効果にある。
社員10人ほどの小さな造園会社、石井造園(横浜市)の石井直樹社長は「ウチは法令遵守以前に、『後でバレてカッコ悪いこと』はやらない。社員たちにはそう教えています」と言い切る。
ビジネスには、たびたび判断が難しい「グレーゾーン」の領域がある。そこで、後で恥ずかしい思いをしないような行動を取るためには、社員、中間管理職、経営陣の各層が、それぞれプライドを持つことが重要になってくる。
「そんな簡単にプライドを持ってもらえるわけが無い」。そう反論する経営者もいるだろう。社員にプライドを持ってもらうためには、経営者がプライドを持ち、部下たちに伝えていくしかない。経営者になければ、社員たちがプライドを持てるわけが無い。
当社はこんな素晴らしい事業をしている、こんなに社会に貢献しているという「ソーシャル・グッド(社会に良いこと)」を、常日頃から社員と共有することが重要だ。
「うちはそこまで立派なことをしていない」。そう考える経営者もいるだろう。そういう会社は、何か一つでも良いから、小さなことでも良いから、「社会に良いこと」を始めてみると良い。