(原田 勝広/明治学院大学教授)
日本のCSR元年といわれたのが2003 年。早いものでもう10年を迎える。一過性だろうという声もあったし、「昔からやっている」と居直る企業も多かった。しかし、このCSR、着実に日本の経営に組み入れられ、ほぼ根付いたといっていいのではないか。何より企業が世界と価値観を共有している点が重要である。
もっとも完全に経営のメインストリームというところまでは企業人のさらなる意識改革が必要であり、このCSR monthly の果たすべき役割もそこにあると改めて肝に銘じたい。
元々、公益や公共の活動については政府、あるいはその集合体である国連がこれを担ってきた。それが、「政府の失敗」を補う形でNGOやNPOなどの市民社会組織が登場し、その時点では営利を目的とする企業に出番があるとは思えなかった。
それは1992年の地球サミットを思い起こせば明らかだ。主役はNGOであり、NPOであった。しかし、10年もたたないうちに国連はグローバル・コンパクトとミレニアム開発目標(MGDs)を打ち出し、企業へのアプローチに乗り出した。2004年4月の安保理では、平和構築と企業の役割を協議するまでになった。
2012年のリオ+ 20 で中心的役割を果たしたのは企業であった。驚くほどの変化といえる。それほど、営利組織である企業に感心が集まったのには理由があると思う。
3.11で垣間見た新たなCSRの萌芽
一つは、環境、貧困、人権、食料、エネルギーなどいわゆるグローバル・イシュー(地球規模課題)が深刻化したこと。
もう一つは、経済のグルーバル化による企業の影響力の大きさと、そのリソース、つまり、資金、テクノロジーなどの豊富さが注目されたからである。CSRという概念は欧米発だが、日本企業には、元々、近江商人の三方よし的な社会貢献意識がある。
足りないのはグローバル意識だけで、たちまち各企業にCSRが浸透したのも、そうした背景によるところが大きいような気がする。政府、企業、市民社会が協働で取り組む、いわばプラットフォーム型の連携は、セクター間の融合を産み、BOPビジネスやソーシャル・ビジネスを誕生させた。