(原田 勝広/明治学院大学教授)
第5回アフリカ開発会議(TICAD Ⅴ)が2013年6月に横浜で開催される。それを機に日本企業のアフリカBOP(ベース・オブ・ザ・ピラミッド)の現状を調べ始めている。当然、大企業が、新興市場に次ぐ「ネクスト・マーケット」としてしのぎを削ろうとしているのだが、一方で、熱い思いを持った小さな団体や中小企業が参戦する舞台にもなっている。最近会って感動した、一般社団法人OSAジャパン会長の坂田泉さんもそんな一人だ。利益確保に傾きがちな大企業に参考になりそうなので紹介する。
坂田さんが取り組んでいるのは、ケニアでのバッテリーのリサイクルによる電化推進事業。わかりやすく言うと、太陽光で発電した電力を再生バッテリーに蓄電し、これをレンタルや販売することで、無電化地域の電化を図ろうというソーシャルなプロジェクトである。
坂田さんはもともと建築家だ。90 年代にケニアのジョモ・ケニヤッタ農工大学へJICA専門家として派遣され、建築デザインを教えたのがケニアとの出合いとなる。暇をみてストリートチルドレンの絵を描き、現地では「ムチョラジ」(絵描きさん)と呼ばれた。市井の人々の中に入ることで、庶民の一生懸命さにうたれアフリカに魅かれていく。帰国後、しばらくして、妻に告げた。「ケニアに行って仕事をしたい」。
日本に詳しいディック・オランゴさんと知り合い、OSAを設立。「O」はオランゴ、「S」は坂田の頭文字。二人のアソシエーションというわけだ。OSAの活動は援助でも慈善でもない。助ける、助けられるという関係でもない。日本とケニアの間の豊かな交わりを通じて何かを生み出してゆく。両国に虹を架ける「虹プロジェクト」である。
日本の卵をケニアでゆでる
「日本製品はハイエンド過ぎて現地のニーズに合っていない。日本の技術を使って市場の近くで生産することが大事。要は、日本のゆで卵をそのまま持ち込むのではなく、日本の卵をケニアでゆでるんです」と坂田さん。薄膜系アモルファス太陽電池もセルだけを富士電機から調達、ケニアでラミネートし、ソーラーシートを生産している。このソーラーシートは柔らかくて折り曲げ自由で、丸いワラぶき屋根でも取り付けが可能だ。