原田 勝広(明治学院大学教授)
CSRが定着し企業だけでなくさまざまなステークホルダーが関心を持ち始めている。とりわけ、若い人たちが企業を見る新しい視点としてCSR を意識することは日本と世界の将来に向け明るい材料ではないだろうか。
今回紹介したいのは日経GSRプロジェクト「大学生と共につくる地球の未来」というイベントである。日本経済新聞社では、グローバル社会の中で、地球規模課題の解決に企業の本業で貢献するというコンセプトをグローバル・ソーシャル・レスポンシビリティー(GSR)と名付け、研究会やシンポジウムを企画してきた。
大学生によるこのイベントもその一環で、今年は3年目を迎える。8つの大学が、あらかじめ指定された8企業の中から2社を選択し、その2社のリソースを使って地球的課題の解決策を提案するという内容だ。
それぞれ工夫の跡があり、プレゼン合戦は大いに盛り上がった。今年3連覇がかかった慶応義塾大学SFC チームは、東芝とベネッセのリソースを使い「シルバーリゾート~アジアで過ごすセカンドライフ~」を提案した。
日本では介護士として働く人材をアジアから輸入しようとしているが、このプランは旅行好きの高齢者にフィリピンに滞在してもらい、現地の人に介護してもらうという逆転の発想だったが、少し詰めが甘く点数は伸びなかった。
期待の東京大学GSRチームは第一三共と千代田化工建設のリソースを使い、「運動量をマイ電力に変えるスマートレジデンス」を出してきた。環境未来都市に想定されているシニアレジデンスでは高齢者の健康維持が課題だが、運動を続けるモチベーションをアップするため、横浜市をモデルに自転車こぎで発電しようというものだ。こちらも評価は低かった。
「GSR甲子園」で日本を元気に
3位と健闘したのは資生堂とベネッセを組み合わせ「ミャンマーの寺子屋支援を通じて公衆衛生の普及と学力の向上を目指す」というプレゼンをした立教大学笠原ゼミ。2位は一橋大学軽部ゼミで、深刻なアフリカの「眠り病」に挑戦。「Sleeping Sickness is Still Awake ~早期発見で救うアフリカ睡眠病~」というアイデアで挑んだ。実現性を数字を挙げて示しており、審査員に高く評価された。