持続可能性と戦略【企業と社会の関係】

齊藤紀子さん齊藤 紀子(企業と社会フォーラム(JFBS)事務局長)

企業と社会フォーラム(JFBS)は、2014年9月18日(木)~19日(金)の2日間、早稲田大学にて「持続可能性と戦略」を統一テーマとした第4 回年次大会を開催します。本大会では、経営戦略における「持続可能性」の概念を問い直すとともに、社会や環境への配慮を組み込んだ競争力の創出のため、求められる新たな経営手法やビジネスモデル、戦略理論について、研究者と実務家がともに議論を行います。

■大会趣旨とトピックス

「持続可能性」という概念が、今日ほど多様な文脈で語られる時代はかつてなかったでしょう。

おそらく現在最も広く用いられている「持続可能性」とは、我々の住むこの地球の自然環境や天然資源をいかに世代を超えて維持していくか、という意味合いであると考えられます。1963年にフラーが用いた「宇宙船地球号」の概念がそれを象徴しています。この延長上に、自然環境や社会構造を犠牲にすることなく経済発展を実現するという「持続可能な発展」という語が成立し、これはいわゆる開発セクターのみならず、また経済発展段階がいずれであるかを問わず、あらゆる国と地域における中心的課題となりました。

その一方で「持続可能性」は戦略理論の領域においても、異なる意味をもって常に中心的テーマでありました。いかなる戦略といえども、それがもたらす最も望ましい成果を表す「持続可能な競争優位」という文脈において、この「持続可能性」は単純に「時間軸上で(その競争上の地位が)継続し得る程度」を意味します。

そこには、企業による戦略行動がもたらす生態学的もしくは社会的な影響に関する含意はありません。つまり、利害関係者理論、関係性理論、社会ネットワーク理論など少数の例外を除き、たいていの戦略に関する理論は純粋に経済的理論であり、その従属変数は常にデフォルトで株主資本価値の最大化でありました。

しかしながら、戦略研究者も実務家も、企業の経済的パフォーマンスの持続可能性が、単に経済合理性のみに基づいて経営資源や能力の最適配分をするだけでは実現できないという現実に直面しています。いまや企業の戦略や関連する諸理論の検討において、「持続可能性」の持つ社会的、生態学的、経済的性質を統合させることは不可避となっています。そしてこの「統合」には、新たな価値観、経営手法の革新、これまでにない異質なビジネスモデル、そして新たな理論とそれを検証する研究手法が必要とされます。

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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