齊藤 紀子(企業と社会フォーラム(JFBS)事務局長)
今号ではJFBS第4回年次大会(2014年9月18・19日に開催、於早稲田大学)より、プレナリーセッション1における報告・議論内容を紹介します。本セッションでは、キーノートスピーチでの報告内容(詳細前号参照)をもとに、多様なステークホルダーを満足させながら持続的に発展する企業戦略について、特に人材をキーワードとした議論が行われました。
まずニック・バーター上級講師(豪、グリフィス大学)より、持続可能性と戦略をいかに理解するべきか概念整理が行われました。
戦略とは、共通の/両立可能な目標をもつ人々の集まりがつくる経済的・法的主体としての組織が組織目的を達成するための行動、計画、ナラティブであり、組織が埋め込まれている文脈の中で意思決定し行動していくための指針となるものです。
持続可能性とは、「現在世代が将来世代の要求を充足する能力を損なわない範囲内で発展すること」という定義がよく知られていますが、私たちがいかに生きたいのかという、人間の目的の話であることを認識しなければなりません。
ともすると私たちは地球環境を外部環境として客体化しがちですが、私たちは環境の中で生存し人間活動や企業活動を行っている、環境に埋め込まれた存在であり、地球の一部なのです。
環境も経済も社会も全てつながり合っているという全体的視野を持つことが重要です。バーター氏は図1ではなく図2のような捉え方が重要であると指摘しました。
持続可能性は、地球を救うためではなく私たち自身を救うためのもの、私たちの目的そのものです。世界を変えるには、方策の一つとして私たちが構成する企業組織の運営方法を変えなければなりません。
従って戦略を考える上では、私たち自身への影響という観点から、環境・社会・経済について持続可能性のための問いをたて答えていくことが求められます(例:その取り組みは、安全・包摂的・公正であるか、短期的・長期的にどのような利益と影響があるか、など)。こうした問いに答えるためには広い視野と専門性が必要であるため、他のセクターや他の企業との協働が必要となるのです。