社員が新興国のNPOと社会課題を解決する「留職」で会社を変える

原田勝広
オルタナ論説委員
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■人生を変えた4カ月
原田 なるほど。そこまで人を変える体験というのはすばらしいですね。次の例も人生が変わったというケースですね。

小沼 はい、ご本人が「たった4カ月で人生が変わった」とおっしゃっているほどです。LEDや自動車照明製造の電気機器メーカーの体験談もあります。

その電気機器メーカーの方は、インドのエコフレンドリーな調理器具メーカーに派遣されました。薪ストーブなので森林伐採による環境破壊と煙による健康被害が問題になっており、これを解決するために協力を依頼されたわけです。

具体的には、生産ラインの効率化、マニュアル化です。もちろん専門知識を生かし、しっかり成果をあげたのですが、一番の変化は自身の成長でした。ソーシャルな活動を通して人は本当に変わるということを実感したということです。

原田 興味深い話ですね。もう少し詳しく説明していただけませんか。

小沼 一般的にいって、エンジニアというのはルーティンの中で仕事をしています。仕事に対するモチベーションも自分のスキルを磨くことという人が多い。皆、まじめですが、社会のためというような意識は乏しく、周囲の人が何を考えているのかにもあまり関心がないタイプが大半です。

その方も、社会という言葉を使ったことがないし、自分の会社が社会と向き合っているということは考えたこともないと言っていました。

それがインドで現地の人たちといっしょに働いてみてわかったのは、皆が、技術やスキルを通して社会を良くしたい、社会に良い製品を提供したいという意識で働いているということ。社会のためにという意識が個人にも組織にも働きがいをもたらしてくれるということを理解できたそうです。

原田 留職というコンセプトが、今の日本のニーズに応えているということがよくわかりました。これから先、どんな企画を新たにしかけていくのか楽しみです。

小沼 これまでに派遣した企業の社員は30歳台が中心。若手社員から中堅層です。まだ構想段階ですが、今後は経営に近い層、つまり、経営者や会社幹部向けのプランも必要だと考えています。

留職を拡大するには、経営側の理解が欠かせないのです。彼らをツアーで現場に連れていき、NGO、NPOや地元企業の人たちと直接対話をしてもらうような企画がほしいところです。ボトムアップとトップダウンの両方を意図しています。

原田 企業も次世代リーダー、それもグローバルな視点を持った人材を育てたいと強く思っているはず。クロスフィールズの活躍が日本を元気にしてくれると信じています。がんばってください。

<インタビューを終えて>
留職という聞きなれない言葉も、内容を知ってみると、本当に素晴らしいアイデアだと気付く。マーケティングプランナーの岡本佳美さんの命名とか。なかなかのセンスである。考えてみれば、クロスフィールズという団体名もNPOと企業という違う分野をつなぐクロスセクトラルを志向する強いメッセージを感じさせる。コンパスポイントは磁石の方位かと思いきや、志を起点に円を描く、その中心とか。軽薄な言葉が消費さればかりの現代にあって、「熱い思い」を「言葉」に乗せようという組織のありように感動する。小沼さんと仲間の思いと、言葉の力を信じたいと思う。(原田)

プロフィール:小沼大地(こぬま・だいち
一橋大学大学院社会学研究科修了。青年海外協力隊でシリアへ。マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社、人材育成を専門に、国内外の小売り・製薬業界を中心とした全社改革プロジェクトなどにかかわる。2011年、クロスフィールズを創業。世界経済フォーラム(ダボス会議)で、志と起業家精神を持ち将来の活躍が期待されるグローバル・シェイパーズのひとりに選ばれた。

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原田勝広
オルタナ論説委員
日本経済新聞記者・編集委員として活躍し日本新聞協会賞を受賞。明治学院大学教授に就任後の専門はCSR論、NGO・NPO論、社会起業家論。2018年より現職。著書は『CSR優良企業への挑戦』『ボーダレス化するCSR』など多数。

2015年10月8日(木)12:19

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