2度未満を目指した歴史的合意、「パリ協定」が採択

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12月12日(パリ時間)、法的拘束力のある「パリ協定」が採択された。気候変動枠組条約の採択から23年、京都議定書の採択から18年。世界は、気候変動の脅威を最小化する共通の課題に対し、とりわけCOP15以降、世界の誰もが、温室効果ガスの排出削減の実効性ある取り組みを速やかに始めるべきことを確認し、そのための世界の新たなルールを模索してきた。(特定非営利活動法人気候ネットワーク代表・浅岡美恵)

その努力が結実し、今日、歴史的合意を成し遂げた。「パリ協定」では、気温上昇1.5度を視野に入れ、2度未満に止めることを決意した。

「パリ協定」は、1.5度、2度未満の長期目標に向けて、国別の排出削減や適応の行動を5年ごとに評価し見直すサイクルを織り込み、各国に国内措置の実施を求めた。さらに途上国が技術移転、能力構築を通じ、排出削減や適応の行動を進め、そのための資金を今まで以上に確保する道を開いた。

このことは、世界が人類共通の課題に一丸となって、たゆみなくお互いの行動を確認しあい、引き上げていく道を作り上げたことを意味する。この文明史的転換を目指し、今後、数十年をかけて自らの経済・社会を脱炭素に向けて大きく変革していくための国際的な協働のプロセスが本格的に始動する。

「パリ協定」は子どもたちに安全な気候を引き継ぐための世界の協働を牽引し、私たち自身の生活の質を高め、平和を導く道筋であり、将来世代の希望となる。困難な交渉の中で「パリ協定」の合意に導いた議長国フランスに敬意を表し、すべての参加者とともに、この歴史的合意を歓迎したい。

2012年以来、気候変動対策の空白期間を重ねてきた日本にとって、「パリ協定」の意義はとりわけ大きく重い。

世界とともに脱炭素へ歩み、気候変動の悪影響を最小化するためにはエネルギー転換は欠かせない。約束草案の下敷きとなった経済産業省の長期エネルギー需給見通しは、旧来の原子力と石炭火力をベースロード電源とし、世界で怒涛のごとく拡大している再生可能エネルギーを封印しようとするものだ。

このシナリオのもとでは、「パリ協定」における日本の責務を果たすことはできない。

石炭火力の新設計画を撤回し、炭素の価格付けと再エネ拡大を支援する電力システム改革への転換が不可欠である。さらに、都市構造や居住環境の改革、適応対策など、政府と自治体の取組は待ったなしだ。

日本は「パリ協定」を持ち帰り、国際社会の中の一員としての役割を果たすべく、国内法および国内政策を速やかに進め、2030年目標を引き上げた上で、速やかに批准にのぞまなければならない。私たち市民もその一翼を担っていく。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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