森林保全で達成されるSDGsの目標はいくつある?

気候変動や生物多様性の危機など、いま世界では森林の減少や不健全な状態がその一因と言えるさまざまな問題を抱えています。

では、森林保全活動を通じて改善できる課題、人々の生活に寄与する森林の機能とは、一体どういったものなのでしょうか?

近年、注目を集める「SDGs」や「ESG投資」というキーワードから考えてみました。

■SDGs
この1年ほどで、特にCSR関連を中心に「SDGs」という単語を耳にすることが多くなりました。

SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月に開催された国連サミットで採択され、193か国が2030年までの15年間で達成するために掲げられた目標です。

簡単に言うと、先進国も途上国も、誰もが豊かで安心・安全な暮らしを継続できることを目標としています。

■森林分野とSDGsの関わり
SDGsは、17の大きな目標と、各目標を達成するための具体的な169のターゲットから構成されています。

SDGsの17の目標

まず、森林に関連することが一目瞭然なのは、「目標15:陸の豊かさも守ろう(Life On Land)」です。ここで「まず」と述べたのには理由があります。

森林にはCO2を吸収・固定する機能もあることから、「目標13:気候変動に具体的な対策を(Climate Action)」にも大きな役割を果たしています。

また、森林が持つ水源涵養・水質浄化機能から、水資源に関する「目標6:安全な水とトイレを世界中に(Clean Water and Sanitation)」にも寄与しています。

それに、木質バイオマスの熱や電気への有効活用という点では、「目標7: エネルギーをみんなに、そしてクリーンに(Affordable and Clean Energy)」、また伐採地の森林環境や地域社会に配慮した木材・木材製品を指す「フェアウッド」という観点では、「目標12:つくる責任つかう責任(Responsible Consumption and Production)」 が当てはまります。

さらには、沿岸部の魚類の繁殖や保護を目的に保全する「魚付き林」といった視点では、海洋資源・生物多様性の保全にも通じることから、「目標14:海の豊かさを守ろう(Life Bellow Water)」にも関わってきます。

このように、森林分野は多くの目標に関わっていることが分かります。

2017年1月に国連森林フォーラム(UNFF)が採択した「国連森林戦略計画2017-2030」では、「森林の活動がSDGsの17目標のうち、じつに14の目標達成に寄与する」 と示されています。

■暮らしや経済を支える「生態系サービス」
なぜ森林がこんなにも多くの目標達成に関わるのか?

それは、自然(生物多様性)から得られる食料や水、安定した気候など、人々の暮らしを支え、経済活動の基盤となる「生態系サービス」の持続可能性こそが、SDGsの土台であると考えれば納得できます。もちろん森林が万能というわけではありませんが、それだけ網羅性が高いということです。

森林の保全が、SDGsの多くの目標達成につながる

SDGsについては、日本の企業もかなり意識するようになってきています。「ウチはIT業だから、SDGsは関係ない」とは言っていられません。どんなビジネスを続けていくうえでも、「生態系サービス」は事業のベースとなるからです。

■ESG投資
近年では、SDGsに加えてESGも注目を集めています。

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の3分野の頭文字をとったものです。

最近では企業の持続可能な成長のために株主からESGの観点が求められており、逆にESGの観点が乏しい企業は、特に機関投資家から敬遠される傾向が強まりつつあります。世界最大の年金基金である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2017年にESG投資に踏み切ったのがその代表例です。

その一方で、例えば、石炭発電などの化石燃料に関わる産業をリスクと捉える「ダイベストメント(投資撤退)」の動きも世界的に進んでいます。

このように、企業が長期的に成長するには、環境や生物多様性に配慮することが今や不可欠となってきました。そうしたなかで、森林は万能ではありませんが、前述のようにかなり懐が深いことから、たとえ森林と直接つながりのない企業でも関わりを持つ意義と必要性は十分にあると言えます。

私たちmore treesでは、森林が持つさまざまな機能の回復を目指し、国内外13か所に展開する「more treesの森」において各地域の実情に合わせた保全活動を行っています。

「都市と森をつなぐ」というキーワードのもと、さまざまな形で森づくりを続けてきたからこそ、SDGsやESGをはじめ今まさに地球規模で取り組むべき課題解決に貢献できる。そしてそれこそが、私たちの役割であると考えています。

editor

オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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