NYのオシャレ女子、1枚のワンピを365日着こなす

写真=黒のワンピースを着こなすシーナ・マティケンさん。2010年4月30日にユニフォームプロジェクトの第一弾が終了した(C) Uniform Project

NYの 広告クリエイティブデザイナーであるシーナ・マティケンさんは、1枚のワンピースを365日間着まわす「ユニフォームプロジェクト」を09年5月に開始した。インドのスラム街に住む子どもたちを学校に通わせるための寄付金を募るのが目的だ。マティケンさんは、衣類の「使い捨て文化」に警鐘を鳴らし、サステナブル(持続可能)で楽しいファッションのスタイルを提案する。

最新の流行を採り入れながら低価格に抑えた衣料品を、短いサイクルで大量生産・販売するファストファッション。若い女性を中心に世界的に新しいトレンドになりつつある。気軽におしゃれを楽しめる一方で、「使い捨て」が慣習化しないか懸念される。

NYでも、H&M(スウェーデン)、ZARA(スペイン)、トップショップ(英国)などファストファッションブランドの人気は高く、人々は安易に衣類を使い捨ててしまう傾向が高いという。そこに一石を投じたのがマティケンさんである。

09年5月、オリジナルデザインの黒いミニワンピースを365日間毎日着まわす「ユニフォームプロジェクト」をスタートした。毎日着られるように、同じデザインのワンピースを7着用意した。一つの洋服でも、工夫次第でいろんなスタイルを楽しめることを示したかったという。

マティケンさんは、4歳から10年間インドで育ち、学生時代は毎日制服を着ていた。そこで、「大人になった今でも、毎日同じ服でオシャレに過ごせるはず」と考えた。ワンピース以外のジャケットやコート、ベルトなどの小物はすべて、手持ちの服か寄付でまかない、新規で衣類の購入をしなかったそうだ。

ウェブサイトでは、毎日違うコーディネートを公開し、訪れたユーザーに、インドでは750万人の子どもたちが学校に通えていないという現状を訴えた。1年間で集まった寄付額は103374ドル(約840万円)。全額をインドのスラム街に住む子どもたちの教育支援を行うアカンシャ財団(インド・ムンバイ)に寄付をした。インドでは1人の子どもにかかる年間の学費は約360ドル(約3万円)とされ、これにより、287人の子どもたちが学校に通えるようになるという。

同じデザインのワンピースを365着限定で、180ドル(約1万5000円)で販売したところ、わずか6日で完売したそうだ。一着180ドルのうち、30ドル(約2400円)をアカンシャ財団に寄付した。

今年8月からは、2年目のパイロットプログラムとして、1カ月間同じ洋服を着まわす「1ドレス・1マンス・1コーズ」プロジェクトを開始した。挑戦者は、自身で寄付先を選び、寄附金を募る。今後は男性向けのプロジェクトも計画している。ユニフォームは、黒か白のシャツを考えているという。

マティケンさんは、本業の広告制作をする一方で、何か社会に貢献できる有意義な活動をしたいとこのユニフォームプロジェクトを発案した。「貧困問題を解決するために教育はとても大切。貧困とファッションは相反するように思われるけど、ファッションの力で貧困問題を解決していきたい」と意気込みを語る。(オルタナ編集部 吉田広子)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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