CSR報告書に3つの潮流-「デジタル化」「対話」「ストーリー」

森摂(オルタナ編集長)

今年も株主総会のシーズンが終わり、上場企業各社のCSRレポートも出揃ったようだ。その全てを把握しているわけではないが、数十社のレポートを目の当たりにして、今年の特徴と言えるものが浮かび上がってきた。(オルタナ編集長 森 摂)

まず、第1の潮流は「デジタル化」。紙からウェブへの流れだ。この数年、味の素、キヤノン、シャープ、デンソー、パナソニック、本田技研工業、三菱商事、三菱電機、リコーなどの企業がウェブ版に完全移行したり、ウェブ版とダイジェスト冊子の組み合わせに変えたりした。

東芝も、今年からCSRレポートの冊子版印刷を止め、ウェブ上でPDFダウンロード方式に切り替えた。同社CSR推進室の佐々木智子・企画グループ長はその理由をこう説明する。

「2012年版は60ページだったが、2013年版は180ページに内容が増えた。検索の利便性と、環境への負荷を考えて、今年はPDF方式に変えた」

同社のCSRレポートは2010年版から、ISO26000の7つの中核主題に沿ってコンテンツを編み始めた。2010年11月にISO26000が発行される前からのことだ。

その手法は今年で4回目だが、今年のレポートでは、人権のページが2ページから8ページに大幅に増えた。PDF化したことによって、ムービー(動画)をクリック一つで伝えられるなどのメリットも生まれた。

年に1回に冊子を発行するのだけでなく、随時、コンテンツを増やしていくことで、そのページを「訪れる理由」を新たにつくれば、企業CSRページのPV(ページビュー)も膨らんでいく。

森 摂(オルタナ編集長)

森 摂(オルタナ編集長)

株式会社オルタナ代表取締役社長・「オルタナ」編集長 武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授。大阪星光学院高校、東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。編集局流通経済部などを経て 1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在に至る。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。環境省「グッドライフアワード」実行委員、環境省「地域循環共生圏づくりプラットフォーム有識者会議」委員、一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事、日本自動車会議「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」選考委員ほか。

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