南米アマゾンの森林火災で仏マクロン大統領が8月22日、「私たちの家が燃えている。地球の酸素の20パーセントを供給し、地球の肺であるアマゾンが燃えている」とツィートした。以前から同様の言説は世界で広く共有されているが、本当にそうなのか。フランスのマスコミも問題にし始めた。 (在パリ編集委員=羽生のり子)
日刊紙「ル・パリジャン」は8月23日、複数の科学者の発言を紹介した。それらを総合すると、「アマゾンは酸素を出すが、吸収もするので、特に酸素を多く出すわけではない。光合成で酸素を出す植物があり、それとは別に死んで分解していく植物もある。それを食べる昆虫やバクテリアが出す二酸化炭素で、酸素と二酸化炭素の割合はほぼ同等になり、プラスマイナスゼロになる」。
国営ラジオ局「フランスアンフォ」には政治家の発言を「ウソかホントか」と検証する番組がある。ここでも「20パーセントは間違い」だと断言した。
科学者によってアマゾンの酸素の排出量は5−10パーセントと開きがあるが、米ミネソタ大学環境研究所のジョナサン・フォーリー教授は「多くて6パーセント」という。「地球の肺と言えるのはむしろ海の方で、海中の植物プランクトンが地球の酸素の半分以上を出している」と同ラジオ局は伝えている。
ただ、アマゾンの森林火災とそれを放置したブラジル政府の責任は過小評価されるべきではない。何よりも、多くの植物、動物が死に絶え、生物の多様性が失われ、アマゾンに住む先住民が生存の瀬戸際に追いやられている。
マクロン氏のツィートにはもう一つ問題があった。ツィートに添付した「燃えている最中のアマゾン」を想起させる写真は、実はローレン・マッキンタイア(Loren McIntyre)というアメリカ人写真家(2003年に死去)のものだった。
マッキンタイア氏は「ナショナル・ジオグラフィック」などで活躍した写真家で、アマゾンも多く撮影した。この「二重のミス」も背景となって、マクロン氏はブラジルのナショナリストたちから攻撃を受ける羽目になった。